日本の電機メーカーがつくる製品には、大きな信頼がよせられてきました。しかし、なかには思いがけない事故を起こすものもあります。
本事案は、当時25歳だった原告の娘が、テレビが出火原因とみられる火事で焼死するという大きな事故でした。そこで被害者は、メーカーに対して損害賠償請求をしました。
メーカー側は、テレビには各種の安全装置が設けられている。製品の型式については通産大臣の認可を受け、設計上の欠陥がない。厳重な製造工程及び品質管理の下に製造・販売しているなどとして、テレビが出火原因であることを否定しました。
裁判所は、まずメーカーの製造物責任について、消費者の通常の用法による使用によって消費者の身体、生命、財産が損害を被った場合には、メーカーは損害を賠償すべき不法行為責任(製造物責任)を負う。
なぜなら、製造者は自己の製造する商品の物理的、化学的性質等を最も良く理解しているのが通常であり、製造者は商品を流通に置く前に、可能な限りその安全性を確保するための調査及び研究を尽くさなければならない。
消費者が商品を合理的利用期間内に通常の使用方法で使用している際に、当該商品からその生命、身体、財産に生じた損害については、特段の事情がない限り、製造者に発生が予見可能なものであったとみることができる。
したがって消費者は、当該商品が通常有すべき安全性を基礎づける事実と、当該事故を生じさせた商品がそのような安全性を欠いていた事実を主張・立証すれば足りる。商品の欠陥が如何にして生じたか、どうすれば欠陥を防止することができたか等まで主張・立証する必要はないと判示しました。
本事案は、現在施行されている製造物責任法より前に提起された事件のため、製造物責任法を直接適用していませんが、同法の趣旨が反映されています。
すなわち、不法行為責任を追及するならば、被害者である消費者が事故原因を証明しなければならないのですが、この責任をメーカー側に転換するというものです。メーカー側が事故原因が無いことを証明できなければ、事故の責任はメーカーにあることになります。
結局、本事案ではメーカー側がテレビに欠陥がなかったことを十分に証明できなかったため、メーカーに対して損害賠償が命じられました。
最近かなりの家庭電化製品が、輸入されたり海外の工場で製造されるようになって家電に対する信頼がゆらいでいます。家庭電化製品による事故が起こった場合、損害に対して海外のメーカーはどの程度責任がとれるのか。国内メーカーであっても、十分に行き届いた品質管理がされているのかなど疑問があります。
製造コストの問題もあるのでしょうが、いわゆるシロモノなど国内で製造されていない商品もあります。消費者は価格だけにとらわれず、事故で損害が生じたときメーカーが十分対応してくれるかを考慮する必要があります。
なお製造物責任法でいう「製造業者等」では、メーカだけでなく「輸入した者」や「販売に係る者」も責任を問われる可能性があるので注意が必要です。
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