【事 案】 墓地使用契約を解除して、払った永代供養料を返せとお寺に請求できるか?  

【結 論】 寺が指定した業者が倒産して墓の建設ができなくても、墓地使用契約が解除できるとは限らない。(東地H26.10.23)

 原告は自分の墓を建立するため、お寺に永代使用料200万円、墓の建設業者に約340万円を支払った。
 その後建設業者が倒産し、墓の建立が絶望的になったため、お寺に対して墓地使用契約の解除と200万円の返金を求めたものです。
 この寺での墓の建設は、倒産した業者が独占的に行っていましたが、寺は墓の建設とは別に納骨室(墓石の下に設置するカロートといわれる施設)は設置していました。

 まず問題となったのは、永代使用料の法的性質です。
 この点について裁判所は、永代使用料は、墓地使用と対価関係にないお布施に当たる場合と、対価関係にある場合の二つがあるとしました。そして本件では、永代使用料が高額であったことなどから、無償のお布施ではなく墓地使用と対価関係のある金員であると認めました。
 次に問題となったのは、寺が信頼関係を破壊したのではないかということ。
 つまり墓の建設が破産した会社に限定されているので、寺も信義則上の責任を負うべきだという原告の主張です。これに対して裁判所は、墓地使用と墓石建立の契約が実質的に密接な関係にあっても、墓地使用と墓建設は別個のものなので墓地使用契約の解除原因にはならないとしました。
 他に、墓地使用契約はお寺の檀徒になることを前提として締結されたものなので、檀徒の身分を捨て(離壇)れば契約が終了すると原告は主張しましたが、裁判所は信教の自由や墓地使用権の永久性・固定性から契約の終了は認められないとしました。

 以上のことから、たとえ独占的に墓の建立を請け負っていた墓石建設業者が倒産したとしても、お寺に永代使用料を返せと単純には主張できないとの結論になりました。
 被告が宗教団体でなく、不動産屋やデベロッパー業者なら違う判決がでたかもしれません。

 ところで最近、祭祀承継者がいない、子どもが墓を守ってくれそうもないなどの話が増えてきています。さらに樹木葬やロッカー式供養堂、あるいは散骨など埋葬方法のバリュエーションが多くなってきました。
 これらの事情と相まって、いわゆる団塊世代が高齢化するにつれて、お墓に関する問題は益々増えてきそうです。

 そもそも永代供養とはいっても、未来永劫個別に供養してもらえるわけではなく、30年ほど過ぎれば他者のご遺骨と合祀されるのが一般的なようです。
 また、寺が「供養堂」と称してはいるものの、どうみても不特定のご遺骨を合祀するためだけの、粗末なコンクリート製プレハブ構造の石棺としかいえないような物件が出回っているようです。
 その背景には墓地不足があります。これまで墓石が建立されていた区画を手放してもらって、合祀することに合意させる。お寺は、合祀の費用と空いた区画を販売して二重に儲けることができるという仕組みです。

 当事務所にご相談頂いたなかに、この手の契約をしてしまったあとで筆舌に尽くしがたい後悔に苛まれ、合祀の事実を知ってから3日後に亡くなってしまったという事件もありました。
 お墓の問題は誰もがいずれ当面するはなしですが、お寺と争うのは社会関係上やっかいです。信教の自由という高いハードルもありますので、慎重な対処が必要です。

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