いわゆるモニター商法と呼ばれる手口です。
具体的にどんなものかと言うと、本事案では布団を消費者に36万円で購入させ、購入者が簡単なレポートを提出すれば、2年間にわたって毎月3万5千円もらえるといった内容でした。そうすると、購入者は買ってから11か月目でもとをとることができ、それ以降はレポートを出すだけでお金がもらえることになります。
しかし結局は購入者が儲けた分は、売った会社が負担するか、他に新しく購入者を確保するしかありません。会社が破綻するか、新たに購入者を引き込めなければ、その時点で終わりになります。
これを一括払いで処理するのではなく、クレジット会社を経由して代金を払わせていたので、クレジット会社への支払いを拒否できるかどうかが争われました。
平成12年に法律が改正され、現在はクレジット会社への支払を拒否できるとされていますが(割賦販売法第30条の4)、本モニター商法が行われた当時は支払を拒否できないとされていました。
クレジット会社側は、購入者はモニター料の取得だけを目的としていたのだから反社会的であり、これを裁判所が救済するのはおかしい。購入者自ら射幸的取引に参加したのに、情を知らない信販会社に対して支払停止を求めるのは、信義則上許されない(支払停止の抗弁は許されない)などと主張しました。
これに対してして裁判所(大高H16.4.16)は、当該商品販売契約とモニター(業務提携)契約は一体不可分のもので、破綻不可避の反社会的であるのみならず、詐欺的商法でもあり、公序良俗に反して全部無効であるとしました。
それを前提として、販売会社とクレジット会社には密接な関係が継続的に存在していたこと、クレジット会社には、自ら開発した信販システムが孕む構造的な危険が悪用されないよう、販売業者との継続的取引関係を通じて調査・監督することが期待されていることなどを指摘し、購入者はクレジット会社への支払を拒否できるとしました。
クレジット会社は、販売会社と関係無いという理由では責任回避できないということです。
本事案では、たかだか5万円程度の布団をマイナスイオンを発生する特殊な素材が織り込んであるから体によいとか、アトピーにも効くなどとして36万円で売りつけました。それだけでも公序良俗に反するとすべきですが、さらに簡単なレポートを提出するだけでその布団代を払ってもお金が残り、いい小遣い稼ぎになるとか、人数と期間を限定してのモニター募集だからもうすぐ締め切られる、契約を急いだ方が良いなどと煽って会員を増やしていました。
このような例は、ほかにもマルチ商法や無限連鎖取引などありますが、本当にいつまでも無くならない手口だと驚くばかりです。まさに手を変え品を変え、法律の網をかいくぐってやってきます。いまどきであれば、健康や環境、節電などの省エネがキーワードになるでしょうか。その入り口もいわゆる迷惑メールや闇サイトだけでなく、SNSソーシャルネットワークなど拡大しています。
例えば、投資ソフトと称して不法な販売を繰り返す業者もいます 東京都から業務停止命令を受けた事案 (東京都生活文化局のサイトから、リンク先の「相談事例」もご覧ください)。
とにかく美味しい話などというのは、そこいらに転がっておりません。前の事例では、損得よりも長時間にわたって事実上拘束され、説得されて根負けしたようですので、疑問を感じたらきっぱりと断ってその場から立ち去る勇気が必要です。またSNSで知り合った相手が、怪しげな商品販売の取り込み役である可能性もありますので十分ご注意ください。