消費者が業者に対して契約を撤回したり解除することができる権利を、クーリング・オフといいます。その申し出を口頭でした場合でも認められるかという問題です。
本事案で買主は、割賦販売契約をした直後に店長に契約の撤回を口頭で申し入れた。しかしクーリング・オフは書面ですると法律の条文にも書かれていますので、書面でしなければならないのが原則です。そこで原審の熊本地裁は、買主が書面で契約を撤回しなかったとして売主からの代金請求を認めました。
しかし高裁は地裁の判決をひっくり返しました。
すなわちクーリング・オフを書面によりすると定められているのは、後日紛争が生じないように明確にしておく趣旨であって、書面によらなければその効力がない旨を明文で定めているわけではないとしました。
ただし、仮に購入者が書面と同等にクーリング・オフしたことを立証できなければ、その不利益は購入者が負うのは当然であるとも判示されていますので、どんな場合でも認められるわけではない点にご注意ください。
本事案では、売主は口頭での契約解除はあったと認めた上で、書面で出されたものではないから無効だと主張したものと思われます。
さらに裁判所は、割賦販売法では購入者に不利なものは無効にするなど、消費者保護に重点を置いた規定であることを重視していますので、書面でないことの一事もって購入者に不利な扱いをするのは趣旨に反するとの結論に至ったものと考えます。
クーリング・オフがとくに問題になるのは、相手が悪徳業者の場合のほか、クレジット会社を利用したときです。クーリング・オフが認められるか否かは、支払い回数や期間、業者が使った契約書など消費者の主張を通すにあたって検討すべき点はたくさんありますので、具体的にどうすれば良いかはケースによってかなり違います。
しかし何と言っても確実にクーリング・オフをするには、多少手間がかかっても内容証明郵便を使うことです。