会社の財務、会計に関する業務は行政書士も行っていますが、交際費、会議費、福利厚生費の処理に悩むことがあります。
本事案は、会社の創立記念祝賀会に従業員とその家族、さらに下請け業者も参加させ、かかった費用を福利厚生費として計上 ▪ 申告した。これが交際費にあたるとされたものです。
会社側は、下請け業者は従業員に準ずるとし、家族帯同の慶祝慰労の宴である。
また、主催した祝賀会は通常一般的に行われている内容であり、従業員の慰安慰労のために1万円前後の費用を支出することは特に異例ではないなどと主張しました。
これに対して裁判所は、下請け業者は他の業者等から工事を請け負うことも自由であるから従業員と同視しえない、一流ホテルでプロの楽団や芸能人を招いた行事は社会通念上一般的とはいえない、一人当たり1万2千円は相当高額だとして、福利厚生費を認めず交際費にあたるとしました。
租税措置法では、もっぱら従業員のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用は交際費から除外されるとしています。
しかし交際費にあたるか否かは、行事の規模、開催場所、参加者の構成及び一人当たりの費用、飲食の内容等を総合して判断すべきであるとされています。
そこで、本事案ではそれらを勘案した結果、当該祝賀会はもっぱら従業員のためにしたものではないとされました。
本事案での行き違いは、親睦と接待の解釈にあったのではなかろうかと考えます。
すなわち、下請け業者とはいえ、自社従業員と同様に扱いたいとの会社の気持ちも理解できますし、福利厚生費として処理できれば税金もかからないという魅力もあるでしょう。
しかし福利厚生だとするには、イベントの場所や内容、規模、金額の妥当性等も考慮されますので、勝手に拡大解釈すると痛い目に遭いかねません。
本事案では問われませんでしたが、本来従業員の全員参加が予定されている福利厚生では、参加する機会を従業員にあまねく平等に与えたか否かが大きな問題になります。
たとえばコンサートや観劇など、従業員の数ほど席が確保できないような催し物を、慰安目的で提供するケースが想定されます。
その場合催し物に参加できた者と、できなかった者の間には当然に不平等が生じます。それをどう処理するか、期日を限定した抽選ならまだ従業員が納得する余地はあるでしょうが、先着順でやってしまうと内部から批判されかねません。
国税庁の通達をみても、人数が限定される催し物においては、参加できなかった従業員に対して参加に代えて金銭を支給すべき (ただし、支給した金銭は所得として扱われる) とされています。
一方会議費と交際費の関係については、一部従業員を対象としたことや、会議が単なる名目、形式にすぎず実態がないとして交際費と判断されたケースもあります(神戸地H4.11.25)ので、ご注意ください。
行政書士は、会社や青色申告事業者の会計記帳業務もしていますが、交際費、会議費、福利厚生費などの仕分け判断で苦慮することが多々あります。
いずれ税金を払うか、更正処分を受けるリスクをとるかの問題ですが、交際費、会議費、福利厚生費を判断する際には相応の注意が必要ですので、この事案を参考にして頂ければと思います。