【事 案】 偽ブランド商品を販売した小売業者に対して、その製品を卸した卸売業者は代金を請求できるか?  

【結 論】 卸売業者は、商品の売買契約に基づく代金を請求できない。(最判H13.6.11)

 偽ブランド商品を扱うことは不正競争防止法、商標法違反にあたりますが、国際的にみれば一向に後を絶ちません。一説によれば、某国による日本の知的所有権侵害は年間9兆円にも及ぶとされており、何らかの対応策が急務です。
 本事案は、外国で製造された偽のRalph-Laurenブランド製品を日本国内で販売したものです。本事案の当事者である卸売業者も小売業者も、ブランド元から警告を受け違法であることを知っていたにも関わらず継続的に販売し、結局は警察の強制捜査を受けるに至った。
 違法な販売契約は無効になりますが、卸売業者は小売業者に対して代金請求をしたため、この代金請求まで無効になるかが争われました。

 原審の福岡高裁は、小売業者に違法性に関する認識があり、当該取引によって利益を得たのは小売業者であり、卸売業者の代金請求は公序良俗に反しないとして卸売業者の主張を認めました。
 これに対して最高裁は、卸売業者と小売業者間において、本件商品が周知性のあるブランド会社の商品表示と同一又は類似のものを使用したものであることを、互いに十分認識しながらあえてこれを消費者の購買ルートに乗せ、真正な商品であると誤信させるなどして大量に販売し利益をあげようと企てたもの。  この目的を達成するために継続的かつ大量に行われ、警察から商標法違反及び不正競争防止法違反の疑いで強制捜査を受けるに至るまで継続的にされたものであることからすれば、その犯意は強固なものである。本件商品の取引は、単に上記法律に違反するというだけでなく、経済取引における商品の信用の保持と公正な経済秩序の確保を害する著しく反社会性の強い行為だとして販売契約を無効としました。
 さらに以上の法令違反と公序良俗違反から、卸売業者は代金支払い請求することはできないと結論づけました。

 売買契約は代金請求の基礎となる契約で、両者は密接な関係にありますから、売買契約が無効になれば代金請求もできないとも思えます。しかしこの主従関係が一律に全てのケースに当てはまるとするのも、行き過ぎのきらいがあります。例えば本事案で、卸売業者が小売業者を欺いて商品を卸していたり、偽物であることが消費者にばれて返品の山になってしまったときなどは、卸売業者からの代金請求は尚更認められないでしょう。 逆に卸売業者にはブランド侵害の認識が全くなかったり、小売業者のみがブランド侵害の警告を受けていたにも関わらず、率先して卸売を扇動したような場合には代金請求が認められる可能性もあります。

 本事案では、卸売業者と小売業者が結託して偽ブランド商品を大量かつ継続的に市場に流通させたため、著しく反社会性が強く公序良俗に反する行為だとされたものと思われます。他にも芸娼妓契約と消費貸借契約、有毒物質が混入するアラレ販売契約などがありますが、いずれも法規違反と公序良俗違反の両面から判断され、主従両契約が無効とされているようです。
 契約は当事者間の意思にもとづいて自由に締結できるのが原則ですが、その内容が違法かどうか、とくに公序良俗違反や信義則違反にあたらないかをきちんと事前にチェックしておく必要があります。

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