【事 案】 同じ町内にある競合店が、他の店より安くしますと大々的に公告し始めたとき公告を止めてくれと言えるか?  

【結 論】 概括的・包括的内容で企業姿勢の表明とみられる場合には、止めてくれとは言えない。(東高判H16.10.19)

 ネット販売をはじめ、同じ商品を売る競合店のあいだで価格競争がし烈になってきた今日、他店より1円でも高い場合には安くしますといった公告も多くみられます。値段が安いことは収入が伸びない一般消費者にとってはありがたい話ですが、そのような安売り公告が景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)に違反するかどうかが争われました。

 たしかに同法4条2号では、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示をしてはならないとされています。そこで、ことさらに競合店を引き合いに出して、そこより安く売りますといった公告は許されないと訴えられた次第です。

 これに対して裁判所は、景品表示法の目的は競争事業者の利益を保護することにあるのではなく、一般消費者の保護にあること。そもそも広告表示は、ある程度誇張されたり単純化される傾向があり、消費者もそれをあらかじめ認識していることを前提とすべきだということ。本事案の公告は全商品を安くするという内容のものではなく、かといって安売り表示が個々の商品に付されたものでもない等の理由で、当該公告は概括的・包括的な企業姿勢の表明にすぎず、景品表示法違反とはいえないとしました。

 この理由づけからすると、競合店と比べて全ての商品が必ず安いとか、値引き後価格は必ず安くなるといった確定的な認識を、大多数の消費者に与えるような公告は違反とされる可能性があります。どの程度の広告ならば消費者の自主的かつ合理的な選択がなされるかを判断するのはなかなかやっかいですが、確定的な認識を与え、消費者を煽るような公告かどうかがひとつの基準になりそうですのでご注意ください。

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