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【事 案】 相続した土地を共有分割したとき、最終的にどのように処分するのが妥当か?新ネタ

【結 論】 現物分割(分筆する)、代価分割(売却代金を分割する)の他、全面的価格賠償(特定人が取得する)も認められる。(東地判H19.4.26)

 土地を何人かで相続するとき、それぞれ持分を決めて共有にするのはよくあることです。
 しかし、後々その土地の処分方法をめぐって兄弟間で諍いの原因となることがあります。
 本事案は、以下の概要のとおり、まさにそのケースでした。

 問題となった土地は約160㎡で、それを長女(7/18)、長男(8/18)、次男(3/18)の共有持分で相続を原因として登記した。
 長女は賃貸マンションに暮らしていたので、その土地に家を建てて住みたいと、長男らに対して自分に売ってくれるよう請求しました。
 一方、長男らは全部売却したいので、長女に対し長女の持分を譲ってくれるよう請求しました。

 これに対して裁判所は、長女が判決確定後1ヶ月以内に長男ら持分相当額を支払ったときは、長女の単独所有とする。
 長女が支払わなかったときは、長男らの所有とする。
 さらに、長女も長男らも支払わなかったときは、土地全部を競売し、それぞれの持分に応じて売却代金を分割配分すると判示しました。

 判決のなかでの裁判所の判断は、次のとおりです。
 まず共有土地の処分は、それぞれの持分に応じて土地を分筆して兄弟間で分けるのが望ましいが、160㎡を分筆すると土地の経済的価値は下がるし現実的ではない。
 長女に土地価格分の支払い能力は一応あるが、父母の残した財産であるから手放したくなく、そこに家を建てて住みたいと考えている。
 長男らにも土地価格分の支払い能力はあるが、将来的に売却したいという意図であり、長女の意思を優先させるのが相当である。

 そこで、まず長女の意思を優先して長女に1ヶ月の支払い猶予期間を与え、支払ったら土地全部を長女の所有とする。
 長女が払わなかったときは長男らが全部を取得する。さらに両者が払えなかったときは全部を競売し、売却代金を分割するという構成です。
 現物分割、価格賠償、代価分割3つの方法の長短を踏まえ、被相続人の遺志、さらには近隣関係なども考慮した妥当な結論といえるでしょう。

 そもそも共有は不安定な所有形態であり、民法上の一物一権主義の原則になじみませんので、分割を制限できる期間も5年間に限定されています。
 一方、時間的に限られている相続手続きの中で、相続人の公平を実現しようと共有にするケースは多いと思われますが、本事案のような問題が将来起こることも想定しておく必要があるでしょう。

 なお、本事案の共有分割の申し立てにあたって、裁判所は次のような事情を総合的に考慮しています。
 共有物の性質及び形状、共有関係の発生原因、共有者の数及び持分の割合、共有物の利用状況及び分割された場合の経済的価値、分割方法についての共有者の希望及びその合理性の有無。
 そして特定の者に取得させるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払い能力があって、共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情があるときは、裁判所が全面的価格賠償の方法による分割の判断ができる。

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