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【事 案】 相続させるとの遺言で相続した不動産は、登記がなくとも所有権を主張できるか?

【結 論】 遺言を受けた妻は、登記がなくとも第三者に対抗して所有権を主張できる。(最判H14.6.10)

 遺言書は「○○に相続させる」と書きましょうと、法律相談などで指導します(本サイト【遺言001、相続010,相続014参照】)。そう書いておきされすれば、遺産は遺産分割の方法の指定と解釈されるので、税金が高い遺贈ではなく相続として扱われます。同時に、遺言の効力は被相続人の死亡の時期に遡って生じますから、亡くなった被相続人の意志も尊重されます。

 では夫の「妻に相続させる」という遺言どおり相続した妻が、いざ登記しようとしたらすでに子が売却してしまって他人名義になっていたとき、あるいは第三者に差押えられていたらどうするか。本事案は、子の債権者に差し押さえられた不動産の強制競売を排除すべく妻が争ったものです。

 裁判所は「相続させる」趣旨の遺言による権利の移転は、法定相続分又は指定相続分の相続の場合と本質において異なるところはない。不動産の権利の取得については、登記なくしてその権利を第三者に対抗することができるとして、遺言で指定された妻を勝たせました。

 債権者としては、登記されている権利関係や誰が相続するといったことは、客観的に判断できるので外部からも分かる。しかし遺言書や分割協議の内容は外部からは分からない事情だから、法定相続を前提として土地の権利移転を認めるべきだと主張したいところです。たしかに分割協議が整う前に売却しても法定相続分は有効として扱われますし、法定相続なら分割協議書が無くとも登記できます。

 本事案のような場合には、強制競売を申し立てた債権者の利益か、亡くなった被相続人の意志かいずれを優先すべきかが問題になるのです。競売申立て者である債権者の取引安全を図り、登記の外観を重視すれば差押えを認めることになります。一方、夫の意志を尊重すれば、強制競売を排除して妻の所有権を認めることになります。結局裁判所は、亡くなった夫の意志を尊重し遺言どおりの相続を認めて、妻は登記なくして債権者に対抗できると判断しました。

 このような争いを回避するには、円滑に分割協議を行い、不動産などを相続したら速やかに登記手続をする必要があります。本事案では、債権者が子に代位して競売等の手続をしたので事実上妻や子は蚊帳の外です。そのようなリスクを避けるためにも、迅速に相続手続を行うことが大切だということです。
 ちなみに遺言を「△△に遺贈する」とか「△△に与える」など書いた場合には、相続ではなく遺贈として扱われ、高い贈与税を払うことになりかねませんので十分ご注意ください。

当事務所がお手伝いします 遺言作成指導、相続人の確定、相続財産の算定、遺産分割協議書作成