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【事 案】 親が子に土地を無償で貸していたとき、子が死亡したらその嫁に土地明渡し請求ができるか?

【結 論】 親と子の間のみならず、親と嫁との間で使用貸借が認められれば、明渡し請求できない。(東高判H12.7.19)

 亡くなった被相続人に関する身分上の権利やある特定の財産は、遺産になりません。
 たとえば代理人としての地位や委任契約、組合員の地位、身元保証人、相続008で紹介した死亡退職金、受取人が指定された保険金などです。
 財産の性格から遺産に紛れ込ませるのは適当とはいえない、相続人に責任を承継させるのは酷だからなどの理由からですが、権利が被相続人との信頼関係に基づいて設定されたというのもそのひとつです。
 使用貸借は無償で物の貸し借りをすることですから、貸し主と借り主との相互信頼が基本になります。したがって、民法では借り主の死亡によって使用貸借は消滅するので遺産にはなりませんが、全ての場合でそうとは限りません。

 本事案では、親から無償で借りた土地の上に家を建てて住んでいた子が死亡し、その嫁が家を相続した。しかし土地は使用貸借にすぎないとの理由で、親が嫁に建物収去土地明渡しを請求したものです。
 民法の条文どおりだとすれば、子の死亡で使用貸借は効力を失いますから妻に土地を使う権原はありません。ならばと借地借家法に頼ろうとしても、たしかに建物を所有し登記があれば対抗力が認められますが、それは第三者に対する対抗力であって当事者間には作用しません。しかし夫が死んだことで家を追い出される嫁にしてみれば、たまったものではありません。

 これに対して裁判所は、親が子に使用貸借を認めた経緯や、家を建てたあとで親がその家を円満に訪問していた状況なども考慮し、建物所有を目的として建物が存在している期間について、親は土地を無償で使用させる使用貸借契約を締結した。またこの契約締結の場には、嫁も孫と一緒に同席していたので、親は嫁に対してもその契約を承諾したとみられる。
 したがって、使用貸借契約は親と子の間のみならず、親とその子の妻の間においても成立したとして、原審である千葉地裁の判決を取消し、親の土地明渡し請求を排除しました。

 借り主の死亡で使用貸借契約は終了せず、土地明渡し請求が認められなかった事案は他にもあります(東地判H5.9.14)。これも親族間の紛争で工場の所有を目的としたものでしたが、工場が存在している以上使用収益に足るべき期間を経過したとは認められないとして、前の事案と同様、土地明渡し請求は認められませんでした。
 土地を無償で貸すということ自体が希で、親族関係以外では滅多に無いでしょうから、相続のときに一気に表面化しやすい問題だといえましょう。

 では無償でなく、有償の賃貸借契約にしたらどうでしょう。
 賃借権は遺産として相続されますので、前述の2つの事案とは違って相続人は堂々と賃借権を主張できます。これを相続税対策としてみれば、借地権がついた土地は評価額がかなり下がりますので、使い方によっては有望な節税対策になります。

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