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【事 案】 祖父が「相続させる」と遺言したとき、相続人の子である孫は代襲相続できるか?

【結 論】 「相続させる」は、遺産分割方法の指定とみるべきだから孫は代襲相続できる。(東高判H18.6.29)

 例えば絵画や土地など、特定の財産を特定の相続人に与えたいときには、遺言書で「相続させる」という書き方をするのが一般的です。ただしこの書き方は相続だけでなく、相続人以外の第三者に財産を与えるとき(遺贈)にも使われます。
 かつて「相続させる」という文言が遺贈を意味するのか、あるいは遺産分割の方法を意味するのかが大きな問題になりました。なぜ問題になったかというと、遺贈だと高い贈与税がかかるのに対し、遺産分割方法の指定だと安い相続税で済むからです。
 最終的に最高裁は、相続人に対して「相続させる」と書いてあるときには遺産分割方法の指定であると解釈して(最判H3.4.19)、安い相続税の適用を認めました。したがって、例えば「Xに土地を相続させる」と遺言に書いてあったとしても、その土地をもらうXが相続人であれば遺産分割方法の指定を意味し、Xが相続人以外の者であれば遺贈を意味することになります。

 さて本事案で問題となったのは、相続させると指定された子が親より先に亡くなっていたとき、孫は代襲相続を主張できるかということです。
 原審の地裁は、祖父が孫(代襲相続人)に対して、新たに分割方法の指定をするといった事情のない限り、それは当然には代襲相続人に承継されることはないとして認めませんでした。つまり、祖父が相続させると遺言に書いても、それは指定された相続人のみに財産をあげるという意志であり、祖父・父の間の相続のみに限定されるべきで、父・孫の相続には適用されないという理屈です。
 たしかに、遺言が孫のことまで考えて書かれているとは思えませんから、遺言は無効だとする主張にも一理あります。
 また、これが相続人に対してではなく第三者への遺贈だったとすれば、第三者が遺言を書いた者より先に死んでしまうと、そもそも遺贈自体が無効になってしまいますから意味をなしません。

 それならどうしたらよいのか。
 遺言には、相続なら孫(代襲相続者)まで含めて書く、遺贈なら第三者が遺言者より先に死んだ場合を想定してその旨書いておくのが確実です。
 ただ本事案について裁判所は、相続人である父が持っていた相続分と同じ割合の相続分を、代襲相続人である孫に取得させることは、相続における衡平の観点に合致する。そして代襲相続人である孫が取得する相続分は、相続人から承継して取得するものではなく、直接被相続人である祖父に対する代襲相続人の相続分として取得するとし、代襲相続人である孫の相続分主張を認めました。
 もう少し分かりやすく言うと、相続させるという遺言は祖父と父の間に限ったことではなく、祖父が孫に相続させる意志もあったと理解した方が、公平な相続を実現できるということです。たしかに、祖父が遺言を書いたあと父が祖父より先に死亡してまったというような偶然の事情で、孫がなにも貰えないというのは不公平です。

 本事案と似たものに、後継ぎ遺贈事件があります。これは、まず妻に不動産の全てを遺贈し、妻が死亡後はその財産を兄弟に遺贈しようと意図して、自筆証書遺言を書いた事案です(最判H58.3.18)。
 最高裁は、遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探求すべきものである。遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探求し当該条項の趣旨を確定すべきものである、などとして妻の死亡を停止条件とした遺言を有効にしました。
 ここでいう遺言者の真意が、自分が死んだ後、妻の生活を守ってやりたいところにあったのであれば、このような停止条件付遺言が不合理と切って捨てるわけにもいかないでしょう

 これまでの判例や学説をみると、前記のような事案は好意的に扱われないようです。例えば、相続させるとの遺言は祖父・父の間の相続に限定し、孫の主張は認めるべきではない。妻が生きている間、妻の次に挙げられている受贈者の期待や権利関係を複雑にするといった批判がありますので、ここで紹介した事案がすべてのケースで採用されるかどうかは微妙なところです。
 ただこのようなケースは、身近にたくさんありそうです。
 相続人である子が亡くなったときには、孫に代襲相続させると遺言書を書き直すべきでしょうし、後継ぎ遺贈にせざるを得ないときは、遺言書に自分の真意を明示する必要があります。
 これは、自分の意志を相続人や受贈者に伝えるだけでなく、相続を円満に進めるうえでとても大切なことです。

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