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【事 案】 長男が農家の跡取りとして農業を手伝ってきたことを理由に、相続財産の7割を寄与分にできるか?

【結 論】 農地の維持管理や、父の看護療養に努めただけでは7割の寄与分は認められない。(東高決H3.12.24)

 寄与分とは、相続人のなかに遺産の維持・増加について特別に貢献した者がいたとき、法定相続分を超えた財産を与える制度です。寄与分が認められると、それ以外の相続人の取り分は少なくなりますし、最低の取り分である遺留分を害するおそれもありますので、分割協議でもめる原因になりがちです。
 本事案は、4人いる子どものうち長男に家を継がせようと財産の7割を与えることにしたところ、長女が納得せず、遺産分割の際に高裁に抗告したものです。巷でもよくあるはなしと思われます。

 裁判所は、農地を管理したり親の看護療養をしただけでは寄与分7割を主張する理由として十分ではなく、さらに特別の寄与をした特段の事情がなければ長男の取り分は多すぎると判断しました。この事案では、長女以外の兄弟は遺産は要らないと納得していたとのことですので、兄弟の総意からすれば長男の主張を認めてもよさそうな気がしますが、裁判所は特別の寄与の程度をかなり厳しく評価したと思われます。
 特別の寄与があったことを主張するには、遺産の維持・増加に寄与したことを具体的に証明する必要があります。相続人だけの分割協議席上であっても、財産形成に寄与した実態、家業の原状と将来にわたる計画、あるいは被相続人の看護療養のためにした労力などについて、周囲を説得できだけの資料をつくっておく必要があります。

 相続人同士、身内なのだからいちいち細かいことにこだわらないで、そこは阿吽の呼吸でという考え方もあるでしょうが、後々火種を残さないようにしたいものです。例えば親の監護療養をしたというのであれば、その必要性や時期、どの程度の内容だったか、他の相続人と比べた貢献度合いなどは少なくとも説明できることが望ましいと思われます。

 調停や裁判に持ち込まれると、調停委員や裁判所が客観的に判断する資料が求められます。たとえ正当な主張であっても、やり方がまずかったために通らないことも多々あります。寄与分を主張するには、それが正当であることを裏付けできるだけの、こころの準備と資料の準備をしておく必要があります。
 また遺産分割協議では、寄与分や遺留分に(準)共有の概念がからんで中小企業の経営権の相続などではとても複雑になりますが、これはまた別の事例で述べたいと思います。

当事務所がお手伝いします 遺留分の根拠となる資料の作成、遺産分割協議、遺留分減殺申し入れ