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【事 案】 自筆の遺言書全面に赤ボールペンで斜線を引いたら、遺言書は無効になるか?新ネタ

【結 論】 遺言を撤回したものとみなされ、遺言は無効になることがある。(最判H27.11.20)

 遺言書を自分で作るときは、全文、日付、氏名を自分で書いてハンコを押すというのがお約束です。どれが欠けても、自筆証書遺言としては不十分です。では右のようにして作った遺言書に、後でその全面に斜線をひいたら無効になるのでしょうか、それとも有効か。

 本事案は、生前開業医をしていた遺言者が、経営する病院の麻薬保管金庫に遺言書を保管していた。しかしその遺言書の書面全体には、赤ボールペンで斜線が引かれていた。相続人である子のひとりは、斜線は遺言を撤回する効果があるとして、遺言は無効だと主張しました。

 地裁と高裁は、斜線を引いた時期が特定できないこと。遺言の変更は特別の方式によるべきであり、元の文字が判読できる程度の抹消であれば効力は失われていない、すなわち有効だとしました。
 遺言書は、とりわけ遺言をする遺言者の意思が尊重されなければなりません。その確実性を担保するため、自筆遺言の場合には厳格な要式性 (お作法) が法律上定められています。遺言の内容を変更する場合も同じで、変更した場所を明示し、変更したという文言と署名押印するという、特別の方式による必要があります。たとえ赤ボールペンを使ったとはいえ、斜線一本で厳格なお作法を破っても良いとはいえません。

 しかし最高裁は、この遺言は撤回されたものとみなさざるを得ないとしました。すなわち、文面全体の左上から右下にかけて引かれているという事実関係の下においては、その行為の一般的な意味に照らして、遺言書の全体を不要のものとし、そこに記載された遺言の全ての効力を失わせる意思の表れとみるのが相当であるとして、遺言を撤回されたものとみなされる、すなわち無効だと判示しました。

 本事案では、遺言者しか開閉できない病院の麻薬保管金庫に保管されていたため、本人が斜線を引いたと思われること。遺言書を有効だと主張した子と遺言者の関係が、遺言書を書いたあと結婚問題をめぐって悪化していたことなどの事情が考慮されたとみられます。
 したがって、どんな場合でも赤線一本で遺言が撤回できるとは言い切れません。遺言書を変更するときは、前に述べたように変更する場所、変更した旨の附記と署名押印という法律の定めに従う必要があります。

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