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【事 案】 自分が死んだ後の処理を友人に依頼したとき、その約束は有効か?新ネタ

【結 論】 死亡によっても契約を終了させない旨の合意を包含する場合は、有効である。(最判H4.9.22)

 自分が死んだあとの処理をどうするか。一般的には配偶者や子などの相続人に委ねるでしょう。
 では相続人がいないとき、いても疎遠である、自分の望むとおりに処理してくれるか分からないといった理由で、知人や友人に頼むこともあるでしょう。
 知人や友人など相続人以外のひとに、自分が死んだ後の処理を頼むことは、民法上委任契約にあたるとされます。しかし委任契約は当事者の死亡や破産、受任者の意思能力がなくなると終了するとされています。
 このため死後の処理を頼まれた友人が、たとえ故人の遺志に沿って処理したとしても、相続人から賠償請求されるといった事態になりかねないのです。

 本事案では、自分の死期を悟った女性が、友達の女性に私が死んだら病院への支払い、葬式や法要をしてくれるよう頼みました。
 さらに世話になった家政婦、頼みごとを引き受けてくれる友人に謝礼金を払う約束もしました。
 友人は、約束どおり故人の頼みごとを処理しました。しかし相続人は、委任契約は本人の死亡によって当然に終了したのだから、死亡した女性の預金通帳と残金を返せと請求しました。それは当然としても、さらに家政婦や友人がもらった謝礼金は不法行為にあたるとして、友人に損害賠償請求しました。

 相続人からの訴えに対して高等裁判所は、民法が定めているとおり委任者の死亡により契約は終了した。そして謝礼金を相続人に返還せよとの判決を出しました。
 しかし最高裁はこの判決を破棄して、高裁に差し戻しました。すなわち、委任者が受任者との間でした自己の死後の事務を含めた法律行為等の委任契約は、委任者の死亡によっても終了させない旨の合意を包含するものである。民法の法意がかかる合意の効力を否定するものではないことは疑いを容れないと判示したのです。

 相続人は、民法に書いてあるとおり、委任契約は当事者の死亡で終了したはずだし、友人とはいえ相続人に無断で遺産を処分できないはずだと主張。一方の友人は、民法の規定よりも故人との約束を守ったということになろうと思います。
 たしかに、法律に書いてあることは遵守されるべきではあります。しかし委任契約は当事者の信頼関係を基礎とするものであり、それ故亡くなった女性の遺志を尊重する必要があると考えれば、友人のした行為も無価値ではありません。

 これは最高裁まで争われた事案ですが、くだんの友人も、遺産を処理する前に相続人にひとことことわっていればずいぶんと事情が変わったのではないでしょうか。
 また本事案は委任契約の終了ないし負担付贈与契約の問題として扱われましたが、友人に死後の処理を頼むにしても、きちんと契約書をつくっておけば、後々友人に迷惑をかけずに済んだのにと考えます。
 さらに、契約書ではなく遺言書にして、友人を遺言執行者として指定する方法もあります。

 行政書士が相続案件を受託するときは、必ず遺言書の確認、相続人の確定、遺産の算出、相続人間の意見聴取などをしますので、このような問題が起きる可能性は小さいと言えます。
 身寄りのない方、ご親族と距離や精神的関係が離れている方、友人に死後の処理を頼みたいとお考えの方は、ぜひご相談ください。

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