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【事 案】 遺言執行者を指定し、全財産を公共に寄与するとして遺言執行者に処分を委ねた遺言は無効か?

【結 論】 遺留分を有する相続人がいない場合において、有効である。(最判H5.1.19)

 まず問題となったのは、本事案で遺言をして亡くなった者には、永らく絶縁した妹しかいませんでした。兄弟は相続人にはなれますが、遺産の最低限の取り分(遺留分)をよこせとは主張できませんので、全財産を公共に寄付しようが第三者に贈与しようが全く問題ありません。よって遺留分の問題はクリアされます。

 次に問題となったのは遺言執行者の身分です。遺言執行者には、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務が与えられています。全ての相続人は遺言執行者を妨げるべき行為はできず、極めて大きな権限を与えられている者が遺言執行者です。本事案ではたとえ妹が相続人であっても、寄与分すら主張することはできず、遺言執行者が財産全てを公益財団に寄付すると決めても何ら問題はありません。
 そこで妹は「公共に寄与する」との文言は不明(曖昧)すぎるので、遺言そのものが無効だと主張しました。
 すなわち、遺言が無効になる場合として満15歳に達しない者の遺言、架空の財産を遺贈するなど実行不可能な内容、目的物や受贈者の具体性を欠く特定不可能な内容、公序良俗に反する内容の場合などがあります。

 妹は本事案において「公共に寄与する」だけでは遺贈を受ける者が具体性を欠き特定不可能な内容だから、遺言は無効だと主張したというわけです。
 これに対して裁判所は、遺言の趣旨は公共団体や公益法人など公共に対する包括遺贈にあり、その選定を遺言執行者に委ねることも含むものとして遺言は有効だとしました。
 たしかに、何が公共に寄与するかの対象や範囲、程度は時代によって変わります。裁判所は、その具体的内容は公共に寄与するという文言に含まれると解釈したわけで、個人の意志尊重からみても妥当な判断だと考えます。

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