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【事 案】 妻子ある男性が、妻と子と不倫相手の3人に財産の1/3ずつ与えるとした遺言は有効か?

【結 論】 不倫を家族が知っていたり、夫婦としての実態がない場合には遺言は有効である。(最判S61.11.20)

 不倫相手に財産の1/3を遺贈するとの遺言を残しても、これは妻子の最低限の取り分である遺留分(遺産の1/2)を侵害しませんから、相手の女性は遺言どおり財産をもらえます。
 では本事案で何が問題になったかというと、不倫は公序良俗違反だから遺言の全部が無効になって、相手の女性は何ももらえなくなるのではないかということです。

 公序良俗違反は絶対的に無効だとするのが民法の原則です。バクチの負けや法定利率を超えた借金は、無効だから返さなくともよいといった例が挙げられます。
 不倫も公序良俗に反する行為です、だとすると遺言自体が無効になってしまうのでしょうか。遺言が無効にならないとすれば、どんな不倫なら公序良俗に反するのでしょうか。
 本事案では、妻子がありながら36歳年下の女性と7年もの間同棲していたというのですから、公序良俗違反の程度はかなり大きく、家族は遺言の無効主張ができそうです。そうすると、やはり遺言そのもの全部が無効になってしまい不倫相手は財産がもらえなくなる。いわゆる根っこからひっくり返るドンデン返しというやつで、法律の世界ではよくある話です。
 しかし7年ものあいだ家族は不倫関係を黙認していたのも事実、これをどう判断すべきかが問題となりました。
 不倫の不法性については疑いのないところですが、裁判所は夫婦としての実態がもはや失われていたこと、妻子がその不倫関係を放置しておいたことを重視しました。また、遺贈が不倫な関係を維持するためでなく、不倫相手の生活を保全するためのものであると判断され、結局遺言は有効だとされてしまいました。

 不倫はされるわ遺産は持っていかれるわで家族側は可哀相な気がしますが、公序良俗違反となるべき行為を咎めず、何も主張せずに放置した場合には保護されなくなる可能性があるということです。
 権利の上に眠るものは救済しないとする、消滅時効の価値観がうかがえます。

 同じような事案に、不倫相手に対する損害賠償請求が権利濫用にあたり、また消滅時効の趣旨に反するとの理由で、不倫の不法性が認められなかったケースもあります(大高判H53.9.29)。
 夫が外に女性をつくり、その女性との間に子を設けたのちに亡くなった。その後親子関係が認められたあとで、妻が女性対して損害賠償を請求したものです。
 20数年浮気を続けて外に子を設けるぐらいでしたから、この事案でも実質的に夫婦関係は破綻していました。
 長年放置したあとで、妻がなぜ損害賠償を請求したかといえば、夫の相続において認知された子の取り分を少しでも少なくしてやろうという狙いだったと推測できます。
 時効消滅する前であれば、たしかに妻には浮気相手の女性に損害賠償請求できますが、裁判上の認知が認められてしまった腹いせとして権利を主張したとなると、公序良俗に反しかねません。妻の気持ちも分からないではありませんが、やり過ぎは禁物です。

 妻の不倫に対して損害賠償や慰謝料を請求するといった、逆のパターンもあります。
 典型的なのは妻の不倫相手男性に損害賠償を求める行為ですが、やり方を間違うと美人局(つつもたせ)になってしまうかもしれません。美人局というのは、ご存じのとおり女性にちょっかいを出したら後で怖いお兄さんが出てくるというアレです。
 いずれせよ、ご本人にはそんなつもりは全くなくとも、脅迫、強要、恐喝と判断されてしまうような内容証明などを送りつけたら逆に告訴されますので、十分ご注意ください。
 なお、親子関係と相続に関連して、権利濫用が問題となった事案(親子005)も併せて御参照ください。

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