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【事 案】 老後の面倒をみた実子は、財産の大部分を養子に与えるという内容の遺言を否定できるか?

【結 論】 養子が離縁されたり、遺言と抵触することがあった場合には遺言を否定できる。(最判S56.11.13)

 まず、遺言書が法律で定められた形式的な要件(要式性)を備えているかが、審査されます(家庭裁判所の検認)。形式的な要件を満足していることはとても大事ですが、では形式的要件を満足していさえすれば、故人の最終意思が推定されるかというと、そうとも言えません。
 本事案では、親は死ぬまで面倒をみてもらう代わりに財産の大部分を与えるとの約束で養子をとり、そのとおり遺言した。しかし両者の仲が悪くなり、離縁して養子は家を去ったので、実子が親の面倒をみた。そうこうしているうちに、遺言を撤回しないまま親が亡くなってしまったというもの。

 養子は遺言がある以上、自分に財産の大部分は遺贈されるべきだと言い、実子は面倒をみたのは自分だから遺言は撤回されたとみるべきであり、財産は自分が相続すべきだと主張しました。
 要式性が重視される遺言においては、撤回された事実がない以上書かれていることが全てですから、養子の主張が正しいとも思われます。また遺言に書かれていることが不当だとするには、その事実を具体的に裏づけして、死亡時の親の意思が遺言とは異なるものだったという証明をしなければなりません。
 そこで裁判所は、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言の全記載との関連性、作成当時の事情や遺言者の置かれていた状況などを考慮する必要があるとしました。本事案では、死ぬまで扶養してもらうことが養子への遺贈の前提だったのに、養子と離縁してしまっていたのですから、養子への遺贈の意思は撤回されたとして実子が相続することを認めました。

 有効かどうかは遺言の厳格な要式に基づかねばなりません。しかしそれがどんなときでも、形式的に有効だからといって通用するものでもない。書面に現れない事情も考慮する必要があるとした本事案の結論は、妥当なものといえます。
 そこで本事案から学ぶべきは、遺言は自由に撤回できるということ。またわざわざ撤回までしなくとも、後で新たに遺言書を書けば前の遺言は撤回されたことになりますので、書きっぱなしではなく、事情が変わったときには新たな日付で遺言書を書くなど、きちんとフォローしておくことが大切です。検認手続の大変さについては遺言は自筆証書で十分でしょ?をご覧下さい。

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