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【事 案】 夫婦が連名でした遺言は有効か?

【結 論】 同一証書に2人の遺言が記載されているときは、共同遺言となり無効である。(最判S56.9.11)

 仲良し夫婦で、遺言書は連名で書こうねといった風景は、誠に微笑ましいものですが、民法に定められている共同遺言の禁止にあたるので遺言は無効になってしまいます。
 なぜかといえば、連名での遺言書を認めてしまうと一方が主導的立場に立って、相手に影響力を与えることを許しかねない。遺言は個人の最終意思ですから、それが制約されてしまうようなやり方を排除する必要があるからです。また両者が同時に死亡することは滅多にありません。通常は夫婦とはいえどちらかが先に死ぬわけですが、残された方は遺言を撤回できなくなってしまう可能性もあります。
 本事案では、夫が全文を自書したばかりか妻の名前まで代書してしまったらしく、妻の遺言は無効とされました。いくら仲良し夫婦でもこれはイケマセン、無効にされても致し方ないケースです。

 では夫婦が連名でした共同遺言だと、書いた夫の分も無効になってしまうのでしょうか。
 本事案で夫は自分で書いているのだから、少なくとも夫の分は有効だと認めてもよいのではとも思われますが、裁判所は夫の分も無効だとしました。
 とても厳しいですね。なぜなら、遺言に書かれている内容はそのまま多額の財産が動く相続に直結し、遺言者が単独でその処分に関わるものだからです。したがって法律で禁止されている共同遺言である以上、夫婦のいずれの分も遺言として認められず全く無効になってしまいました。
 遺言は、亡くなったひと個人の最終意思を確認し、それを尊重するところに最も大きな意義がありますが、形式的にも適正につくられていることが大変重要なのです。

 有効な遺言書にするためには、遺言の内容に先だって遺言の形式、遺言の要式性が守られている必要があります。家庭裁判所がする検認は遺言書の形式的な有効、無効を確認するためのものです。
 もっとも同じ紙に書かれていても、内容が全く独立していて、紙を切り離せば2通になるような場合には共同遺言にあたらないとの理由で有効だとされたケースもあります(最判H5.10.19)。また遺言書には押印しなければなりませんが、遺言書にではなく遺言書を入れた封筒の封じ目に押印したものが有効だと判断された例もあります(最判H6.6.24)。

 遺言書は、まず第一に客観的な形式が重視されますから、自筆遺言書をつくるのであれば、全文・日付・署名の3つを自分の手で書くこと(ワープロはダメです)。そして遺言書そのものに押印(実印が望ましい)すること、この4つを守れば大丈夫だと覚えて頂ければと思います。ただし検認手続の大変さについては遺言は自筆証書で十分でしょ?をご覧下さい。
 ちなみに遺言で指定できる事項は3つあり、法律で定められています。相続に関するものは相続分の指定、遺産分割方法の指定、分割の禁止、遺留分減殺請求の方法、遺言執行者の指定など。身分に関するものは子の認知、後見人の指定。財産処分に関するものは遺贈、寄付、信託などです。

 書き方の例としては「太郎に○○の土地を相続させる。」「花子に□□銀行の△△番の預金を相続させる。」などがあります。
 基本的に、遺言書には何を書いてもかまいません。付言事項と呼ばれますが、例えば家族互いに助け合って仲良く暮らしてくださいとか、葬儀は簡素になどと書いても良いのですが、法律上の効果は無いので家族は仲良くする義務を負ったり葬儀の方法を拘束されません。
 むしろ自分がかつて相続で苦労したからとか、平穏に相続手続を済ませてもらいたいなど、遺言書をつくった理由を付言することは望ましいと言えます。家族への思いをあまりにも書きすぎると、かえって家族関係がぎくしゃくしてしまうおそれがありますので注意が必要です。
 積極的に思いを書くべきだと勧める法律家もおられるようですが、結論を言えば、遺言書はスッキリと、法律上書くべきことに限定して書き始めた方が良いでしょう。遺言書は相続人全員に公開される、言わば準公文書のようなものだと意識し、その余の法律的効果が無いことは遺書なり遺訓なり、あるいは手紙など遺言とは別のかたちで相続人に伝える方法もありますから。

 なお、相続手続を受託したり法律相談などの際に、プロの法律家ならまず始めに必ず「遺言書はありましたか?」と質問するでしょう。
 遺言か単なるお手紙か、封筒の中身の区別がつかないケースも中にはあります。そのような場合には、勝手に開封してはいけません。面倒でも、まずは家庭裁判所に持ち込んで検認を受けておく、これが後々のトラブル回避上とても大切です。
 上に記した4つのことに加え、相続人が確実に遺言書だと分かるよう、封筒に「遺言書」と表書きし、糊で封した上に封印を押しておけば、より間違いありませんね。

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