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【事 案】 DNA鑑定の結果だけで、男に対する認知請求は認められるか?新ネタ

【結 論】 DNA鑑定結果は重要な間接事実であるが、他の間接事実と総合的に評価される。(長野高判H23.12.13)

 父子関係の認知を請求できる期間は、前述の(親子007)で述べたとおり父の死から3年以内です。
 では男性に認知させるために必要な証拠は、DNA鑑定結果だけで十分でしょうか。
 たしかにDNA鑑定は近年精度が向上し、個人識別や親子関係など、刑事裁判をはじめ民事・家事紛争の重要な証拠として使われています。目的や鑑定方法によって若干の違いはありますが、その精度は99.99%以上といわれています。
 ちなみに法科学鑑定研究所株式会社のサイトでは5つの鑑定方法が紹介されています。

 しかし体外受精の可能性もあり、それなら男性が死亡していても受胎は可能です。では男性が当時海外赴任していたり、刑務所に収監されていたとしたらどうか。またDNA鑑定とはいえ100%確実とはいえないなどの問題があるので、鑑定以外の証拠も併せて検討する必要があるのです。
 本事案は、妻子持ちの男性と未婚女性がアダルトサイト内の麻雀スレッドを介して知り合った。
 その後女性は、男性に妻子があることを知りつつ付き合って子を出産したが、男性側が任意認知を拒否したため、子の認知と慰謝料を求めて争ったものです。

 この認知請求に対して裁判所は、妊娠した当該男女間に情交関係があったこと、男性に自らの子であることを認める言動があったこと、女性の妊娠当時他の男性との情交関係があったという事情が見あたらないことなど、DNA鑑定(99.998%の確率)以外の事情を併せて考慮した上で、認知請求を認めました。
 DNA鑑定がそれほど普及していなかったころは、科学的知見として血液型に矛盾があるかどうか、指紋その他の人類学的検査結果からみて妥当かといった事実が取り上げられていましたが、平成10年ごろからはDNA鑑定が主流になってきたと言われています。

 父子関係の確定は、養育費や相続など財産の帰趨だけでなく人の身分に係わる問題です。慎重を期すためには科学的根拠だけでは足りず、総合的に検討する必要があるということです。
 制度上も、認知の訴えは人事訴訟のひとつとして扱われています。通常の民事訴訟では、当事者が主張立証責任を負う弁論主義がとられますが、人事訴訟では裁判所が事実と証拠の収集を行う職権探知主義が妥当するとされています。したがって、例えば女性側がDNA鑑定で99.99%証明されたと主張しても、それ以外の事実も証拠として提出することが求められるでしょう。
 とくに妊娠した当時、当該男女間に情交関係があったという間接事実は非常に重要であり、それを上手に証明できなければ父子関係は否定され、認知請求は認められない可能性が大きいと思われます。

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