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【事 案】 婚姻関係にない男女から生まれた非嫡出子は、父の死から5年経っても認知して欲しいと請求できるか?

【結 論】 父親への認知請求は、原則として父の死後3年以内に限られる。(最判S57.3.19)

  婚姻していない男女の間に生まれた非嫡出子が、嫡出子としての身分を取得するには、子の方から父に認知請求する方法があります。
 認知してほしいという子の請求に、真実の父たる男性が自由意思で応ずれば任意の認知、あるいは子が訴えて裁判所が親子関係を認めれば強制認知となり、子は法律上嫡出子としての身分を取得できます。
 しかし、子はいつでも認知請求ができるかといえばそうではありません。父が生きている間はいつでもできるのですが、民法では父の死から3年を経過すると請求できないとされているのです。

 父子関係が真実なら、父の死から3年間しか認めないというのは酷なようにも思われ、これまでも憲法違反ではないかと争われましたが、3年は除斥期間で身分関係に伴う法的安定を保持する上から相当だとして合憲とされました(最判S30.7.20)。
 3年を超えて子は親子関係の存在確認の訴えは提起できないとして、訴えが棄却されたケースもあり(最判H2.7.19)、裁判所は認知請求ができる期間を厳格に扱っているようです。

 このような流れのなかで、本事案は出訴期間の始まりを遅らせることで、認知請求が認められたものです。
 本字案では父が家出をして行方不明となった3ヶ月後に子が生まれた。ところが、父は家出して間もなく死亡していたことが、家出から3年1ヶ月して警察からの知らせで判明した。そこで、子の母親である内縁の妻が裁判所に認知の訴えをしたが、そのときにはすでに父死亡から4年半近く経ってしまっていたというもの。
ただし、母親は父が家出したため、やむなく婚姻届けと子の出生届けを勝手に提出していたとの事情がありました。

 婚姻届けと子の出生届けは、父が死亡してから提出されたものなので明らかに不適法ですが、裁判所は子は嫡出子としての身分を取得していたのであるから、父死亡の日から三年以内に認知の訴えを提起しなかったことはやむを得ない。
 出訴期間を定めた法の目的が、身分関係の法的安定と認知請求権者の利益反故との衡量調整にあることに鑑みると、父の死亡が客観的に明らかになった時点から起算することが許されるとしました。
 すなわち、父の死亡が客観的に明らかになったのは警察からの知らせがあったときで、父の家出からすでに約3年経っていました。そして認知の訴えを提起したのは、警察の知らせから約1年半後ですから3年以内の要件は満足されて、子の認知請求は認められました。

 さてここで懸念されるのが、非嫡出子の相続分を嫡出子の1/2とする規定を法令違憲とした最高裁の決定です(最決H25.9.4)。これを受けて民法が改正されれば、非嫡出子に嫡出子と同等の相続分が与えられます。認知請求は相続にも直結する話ですので、今後認知請求が取り沙汰されることも多くなるかもしれません。
 男側の責任だと言ってしまえばそれまでですが、相続に限らず、認知請求が認められれば家庭内紛争も必然的に予見され、そうであるならなおさらのこと、遺言書など事前の準備が大切になります。

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