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【事 案】 他人の子を自分の子として届け出た父は、長年育てたあとでも父子関係を否定できるか?

【結 論】 DNA鑑定で親子関係不存在が明らかな場合には、父子関係を否定できる。(福高判H10.5.14)

 裁判所はDNAの鑑定結果をもとに父子関係を否定できると判示しましたが、非常に議論をよんでいる判決です。
 独身のときに複数の男性と付き合いがあり妊娠した女性に対して、男は自分が子の父となるから一緒に育てようと約束して結婚した。その後生まれた子を20年以上も実子同様に慈しみ育てたまではよかったが、夫婦間の関係が思わしくなくなり、離婚するに至って子に対して親子関係不存在の訴えを起こしたものです。
 子にしてみれば、生まれたときから信頼しきっていた父から、おまえは私の子ではないと夢にも思わなかった裁判を起こされたのですから、成年に達していたとはいえ、たまったものではないでしょう。
 育てた事実と子の気持ちもしんしゃくしたせいか、第一審裁判(大分地判H9.11.12)ではDNA鑑定も100%信頼おけるものではないとの理由で、父の地位を拒むことはできないとして父親の訴えを認めませんでした。

 しかしこれが、高裁でひっくり返され父子関係は否定されてしまったという次第です。
 この事案については、現在でも認知やその撤回などの問題と併せて様々な検討がされているようですので、今後の動きに注意すべきかと思われます。

 これと似た事案ですが、逆の結論に至ったケースもあります。
 子の立場は前の事案同様、他人の子なのに実子として届けられた子が主役です。
 その他人の子が親の全財産を相続することになったのですが、そうすると実子は財産をもらえなくなるので面白くない。そこで実子である兄弟が、他人の子に対して親子関係不存在を主張し、相続を阻止しようとしたものです。前の事案では父が父子関係を否定しましたが、今回は兄弟が親子関係を否定しようとしました。
 これに対して裁判所は、親がすでに死亡しているときは、実際は他人であっても、子であることを否定されたら養子になる途も閉ざされる。すなわち、養子関係は子から一方的に主張できませんので、養子となる途は閉ざされてしまうのです。子であることを、血のつながりがないことだけで否定されるとすれば、子の精神的苦痛や経済的不利益が大きく、著しく不当な結果をもたらす。よって実子兄弟の主張は権利濫用にあたり許されないとして、親子関係不存在の主張を排除しました。(最判H18.7.7)

 権利濫用とは、たとえ外形上は適法にみえても、権利の行使が道義的に許されないような場合に使われます。本事案では、親子関係が無いのだから相続できない、という兄弟の主張は権利の濫用であって、法律的保護を受けるに値しない。よって実子たる兄弟の主張は権利濫用にあたり許されないとして、結局他人の子も財産をもらえることになりました。
 親と子の関係は、DNA鑑定などの血統に求める事実主義、継続した社会関係に求める意思主義に大別できますが、いずれも一長一短があってどちらが優れていると即断できません。そこで、法はケースごとにそれぞれの事情を斟酌し、場合によっては権利濫用などを使い、事案に応じ法律の立て前を修正して妥当な結論を導き出しているようです。

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