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【事 案】 病死した夫の精子で体外受精をしたとき、生まれた子と夫に親子関係は認められるか?

【結 論】 夫と子の間に法律上の親子関係は認められない。(最判H18.9.4)

 晩婚化が進むなか、不妊治療や体外受精を受ける夫婦が増えてきています。2009年度の特定不妊治療助成支給件数は約8万5千件、これらを専門とするクリニックの数も日本は世界一ともいわれています。体外受精が増えるにつれて、親子関係に関する法的問題に直結することも多くなるでしょう。
 この事案は、病死した夫の凍結保存精子を使って体外受精をし、生まれた子を夫の嫡出子として出生届を出したが、受理を拒まれたものです。夫があらかじめ保存精子の利用を拒否していたり、利用されることを知らなかったのであれば、親子関係は否定されても仕方ないでしょう。
 しかし本事案では、夫は病死する前に、妻が再婚しないのであれば自分の子を産んで欲しいと親族に対して言い残し、保存精子を使って子を授かり家を継いでもらいたいとの意思表示をしていたというのですから、親子関係を認める素地は十分あると思われます。
 現に、高裁は親子関係を認める旨判示しました。

 しかし最高裁はこれをひっくり返しました。
 すなわち、現行法は死後懐胎子の親子関係を想定しておらず、生まれた子が父から養育されることはあり得ず、また父の相続人にもなり得ない。法的に親子関係を認めるには生命倫理、子の福祉、社会関係などを踏まえ立法によって解決されるべき問題だとの趣旨で親子関係を認めませんでした。
 近年はDNA鑑定技術が発達して99%以上の確率で父子関係が推定できますが、それは間接証拠による推定の域を出ず、夫の死後に懐胎した子が本当に夫の子かどうか、法律上の疑問が残ります。
 また憲法上、裁判所には問題となった事案についての、具体的審査権しか与えられていないとするのが原則です。
 裁判所が無闇に法律を憲法違反と断じることは、裁判所自らが憲法を犯すことになりますから、現在の法律が現代の医療技術に追いついていない以上、死後懐胎で父子関係が認められないのはやむを得ないとも言えます。

 ではこのような場合、現実的にどのような方策があるでしょうか。
 死後懐胎は死後認知とは違いますから、男性との間で戸籍上親子関係をつくることはできません。そのまま放置すれば、子は代襲相続人になるでしょう。
 しかし亡くなった夫が体外受精で子をつくりたいと思った理由のひとつに、家を継いでほしいという願いがあったのですから、孫や妻と養子縁組みして身分的、経済的保護を立ててあげるのが妥当かと考えます。

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