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【事 案】 兄の制止も聞かず、妹が勝手に親を連れ出して面倒をみはじめたとき、兄は扶養費を負担しなくともよいか?

【結 論】 兄の意思に反して親を連れ去ったという事実だけで、兄に費用負担の義務なしとはできない。(最判S26.2.13)

 親の面倒を誰がみるか、なかなか厄介な問題です。沿革的には、民法旧規定にも配偶者、直系血族と兄弟姉妹に扶養義務がありますが、さらに旧規定では扶養義務者が複数いる場合には配偶者、直系卑属、直系尊属、戸主などのように明文で順位づけられていました。
 本事案は、病身で夫と不仲だった母親は兄の家で暮らしていた。その事情を憂慮した妹は、兄が反対し引き留めるのを聞かずに母親をひきとって扶養看護した。そこで兄は、妹は言うことをきかず勝手に母親を連れ出したのだから、自分には母親の扶養費用を負担する義務は無いと主張したものです。

 原審の高裁は、妹が兄の意思に反して母親を連れ去ったばかりか、兄が母親を迎えに行ったにもかかわらず妹は応じなかったのだから、兄に費用負担の義務は無いとしました。これに対して最高裁は、例えばとして、扶養することはしたが相当の扶養をしなかったらどうか、あるいは虐待されている母親が同居に堪えないのを見かねて引き取って世話をしたということもあり得る。そういうことになると冷淡な者は常に義務を免れ、情の深い者が常に損をすることになる虞があるとして、兄にも費用負担義務があるとしました。
 家督制度が排除された現代の価値基準からすると当然の結論とも思われますが、昭和26年のことですから長兄が家を継ぐという名残りが感じられます。民法旧規定を眺めてみると、相続財産の帰趨のほか家族の居所決定についても戸主に権限があり、それらも本事案の背景事情となっているのかもしれません。

 相続について非嫡出子も含めて子の平等が重視される一方で、親の老後について子らは誰がどのように関与するかますます混迷してきた感があります。とくに親の財産が適正に管理されているか、財産からの支出に応じた監護がなされているかなど、ともすると子らの間で相互に疑心暗鬼に陥るケースもあります。問題がこじれる前にご相談頂き、無用な親族間の紛争はできるだけ回避して頂きたいものです。

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