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【事 案】 子のなかに親の面倒をみない者がいたとき、その子に過去の扶養料を請求できるか?

【結 論】 家庭裁判所が関係当事者間の事情を考慮して定め、過去の扶養料を請求できる場合がある。(東高決S61.9.10)

 家督相続制度が廃止されて、遺産相続権が子どもに平等に与えられるようになったこと。これから少子化で親の面倒をみる負担が大きくなっていくことを考え併せると、親の扶養について誰がどんな負担をすべきか、負担の平等についての問題が大きくなると考えられます。
 民法上直系血族と兄弟姉妹は互いに扶養義務があるのですから、親の扶養をおざなりにしている子に対して、他の子は現実に支出した分を請求することができます。とはいえどの程度まで請求できるか、また過去に遡ってまで請求できるかはケースによって異なるでしょう。過去の扶養料を請求できるかについては、請求時以降の分に限り請求できるとする古い判例(大判明34.10.3)がありますが、これはあまり過去まで遡ってしまうと、例えば親が自活できていた時点まで請求できることになって、子に酷だからと思われます。

 本事案は兄弟姉妹間において過去の扶養料の求償を認めたものですが、親の場合にも妥当すると思われます。親の資産状況、扶養した期間やその内容、子の収入や生活状況などによって基準は違ってきますが、裁判所がそれらの具体的事情を考慮したうえで、実質的に公平になるよう内容を定めることができるとしました。
 親の面倒を誰がみるかという問題は、相続同様親族間トラブルの原因となります。子らの間で無用な諍いが起きないようにしたいというのであれば、あらかじめ任意後見制度を使って財産の行方を信頼できる第三者に委ねたり、遺言で後日トラブルが起きないように準備することをお勧めします。

 なお最近子の収入が相当あるにもかかわらず親の生活費を負担しなかったので、親が生活保護を受けていたという事例が取り沙汰されています。生活保護の制度設計や運用にも問題はあるのですが、親族は相互に扶助義務を負うとの民法規定に、親の生活補償の根拠を求める見解があります。たしかにそうなのですが直截にすぎるきらいがあり、かといって道義上の問題でしかないとしたのではペナルティを課すこともできない。
 そこで親の面倒をみない者に対しては、信義則違反を問うては良いのではと考えます。そうすれば負担割増しなど、より丁寧に責任追及でき、相続において不利に扱うこともできる。さらに親族に対してさえ信義則違反をするような者ですから、第三者との経済取引においても不利な評価をされてもやむを得ないことになる。

 我が国の社会保障制度はできてから未だ60余年しか経っておらず、また昨今の財政難をみるに社会保障全てを既得権とするのには困難を伴いそうです。家族制度がまずまず健全なうちに、社会保障のありようを検討すべきかもしれません。

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