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【事 案】 本人が知らないあいだに出された婚姻届けは有効か?

【結 論】 届出以降も実質的な夫婦関係を続けていた場合、追認があったとして有効となる。(最判S47.7.25)

 自分が全く知らないあいだに、相手に勝手に出された婚姻届けは無効です。しかし届け出された事実を知らなくても、実質的な夫婦関係を続けたときには、それは婚姻の追認とみられ婚姻届けが有効だとされました。

 勝手に婚姻届けを出されてしまうのは、どんな場合でしょうか。偽造されて出されてしまったときや、意思は固まっていないがとりあえず書類をつくって相手に預けておいたとき、あるいはどちらか一方が事故や病気で意識をなくしてしまっているケースなどが考えられます。
 一応民法では、本人が全く知らないのに出されてしまったときは婚姻の無効を、強迫や詐欺によって婚姻届けが出されたときは婚姻取消しを裁判所に申立てることができます。
 前者の無効申立ては、一方当事者の意思を欠いているので民法の原則どおりで、後者は当事者の意思に瑕疵があるので、これも民法の原則どおりのことといえます。

 本事案は、姑と嫁の不和と妻に対する夫の無理解がそもそもの原因で、妻は家出して一度は離婚した。しかし姑の死後、妻は家庭に戻って再度同居するようになり、その後も実質的に夫婦と同じように生活していたので、妻が勝手に婚姻(再婚姻)届けを出してしまったものです。
 前述のとおり、婚姻が認められるためには婚姻の届出と婚姻の意思の二つが必要ですが、この事案では夫は届出されたのを知らなかったので、婚姻の意思が無く無効だと主張しました。

 では実質的に夫婦関係を続けていたことを、どうみるべきでしょうか。
 裁判所は夫婦関係を継続した事実を尊重し、婚姻を追認したとして婚姻届けを有効だと判示しました。婚姻など身分行為に関わる意思表示を、一般の経済取引などで認められている追認と同様に扱って判断してよいのかという疑問が残りますが、届け出されたことを知らなかったことのみで、その後の夫婦生活を否定する夫の主張には、やはり無理があります。
 信義則での処理も考えられますが、より一般的な追認とすることで理由を明らかにしたと言えます。

 他にも、本人が意識不明の危篤状態のときに、相手側が婚姻届けを出したという事案があります。
 このケースでは将来結婚することを前提に性的交渉を続けてきており、さらに本人が危篤状態に陥る前に家族に婚姻の意思を告げていたとの事情もあって婚姻届けは有効だと認められました。
 近時は熟年同士の結婚なども増加していますので、一方が意思能力を欠く状態で出された婚姻届けの有効性が問題になったときには、これらのケースが引き合いに出される可能性があります。

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