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【事 案】 不当に婚約を破棄した相手に対して、どんな請求ができるか?

【結 論】 正当な理由の無い婚約破棄は債務不履行にあたり、損害賠償や慰謝料請求ができる。(最判S38.9.5)

 婚約期間は、一生のうちでもいちばん楽しい時期のひとつといえましょう。男女が出会って結婚を約束し、相手側の家族の一員となることを前提に結納を執りおこなって、結婚式や新しい住まいの準備をする。この一連の行為はどこかの店先でショッピングするのとは違って、色々な手続・段階を踏んでゴールに至るものです。婚約から婚姻届けを出すまで、色々な約束や手続の積み重ねがある点で不動産売買に似ているとも言えます。
 したがってその間、男女ともとてもナイーブな情況にあるわけですが、約束や手続に双方の誤解や食い違い、さらに約束違反が起きるおそれがある点もまた、不動産売買と同様です。そして誤解や食い違い、あるいは故意・過失によって信頼関係が失われたときに、婚約解消という不幸な事態も起きかねません。

 本事案は、幼なじみの男女が、同棲するでもなく互いの親族に知られるでもなく三年余り肉体関係を継続した。しかし男性側が特段の理由もなく別の女性と結婚することになり、幼なじみの女性との婚約を破棄したものです。つき合っている間に、女性は二度の中絶を行ったとの事情もあり、男性に慰謝料の請求をしました。
 裁判所は、まず女性側には夫婦として共同生活を営む意思があったとして、婚約の成立を認めました。さらに男性が不当に婚姻の予約を破棄し、女性の社会的名誉を害したとの理由で男性に慰謝料の支払いを命じました。

 まずここで問題となるのは、果たして婚約は成立していたのかということです。周囲に婚約を宣言していなかったからです。
 しかし婚約は両者の合意のみによって成立しますので、当事者の関係を親族に申し出ることも、結納を交わすことも、同棲した事実も必要ではありません。将来の結婚に向けての合意があれば、婚姻契約の予約として婚約は成立します。本事案では、女性は男性の求婚に応じて共同生活を営む意思で約束をしましたので、婚約は成立しています。
 そうすると、婚約は婚姻契約の予約という法律行為ですので、この契約に反する行為をしたり正当な理由のない婚約破棄は不法行為や債務不履行にあたり、損害賠償や慰謝料を払わなければなりません。

 ではどんな行為なら、婚約破棄の正当な理由といえるのでしょうか。
 これまでの事例では婚約者以外の異性との情交、虐待や暴力、結婚式直前での行方不明、その他社会常識を相当程度逸脱する行為などが、婚約破棄をされてもやむを得ない理由とされています。逆に婚約破棄が認められなかったケースには容姿や性格を理由とした結婚式直前の破棄、結婚サービスを悪用してつきあいを始めた事案、宗教上相手に改宗を迫ったもの、民族差別や部落差別によるものなどがあります。
 さらに、一方の親が当事者の自由意思を封じるような方法で、強く結婚に反対して婚約を解消させた場合などもあります。そのようなケースでは親への損害賠償請求も認められるでしょう。

 ただいずれにしても、婚約は必ず結婚しなければならないという強制力を持つものではありません。また正当な婚約破棄かどうかは、婚約破棄の理由はもとより、真剣に話し合った上でのことか電話一本だったかなど破棄のやり方、つき合っていた期間、つき合いの程度などあらゆる状況が勘案されます。
 婚約破棄の背景が全く同じというケースはあり得ず、不法行為で処理するにせよ債務不履行で処理するにせよ、個別事案ごとに、状況をよくよく検討する必要があります。

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