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【事 案】 後見人が横領したとき、家庭裁判所は後見人の選任や監督について責任を負うか?

【結 論】 横領することを認識しあるいは認識しえたときは、国賠法上の責任を負う。(広高判H24.2.20)

 File(後見002)で裁判所の敷居が高いという見解もあることを述べましたが、裁判所側もそれだけの責任を負っていますので、やむを得ない面はあります。本事案は法定後見人が被後見人の財産を着服横領してたため、裁判所も国家賠償法上の責任を問われたものです。

 この事案の被害者は交通事故で脳挫傷、意識障害、四肢麻痺等の後遺症を負い、ついには植物状態に陥った。被害者に妻子はおらず、姪として親戚づきあいをしていた後見人候補者が定期的に見舞い、おしめやパジャマの購入をするなど世話をしていた。そのような状況下で保険金約4,800万円の授受をさせるため、保険会社が当該候補者に後見審判申立てをするようもちかけた。しかし当該候補者には精神年齢8歳4ヶ月程度の精神遅滞障害があり、法定後見人には選任されたものの、被害者の財産約3,500万円を着服横領してしまった。
 この後見人は業務上横領罪に問われて懲役1年8月の実刑判決を受けましたが、家庭裁判所も後見人選任上の違法と、3,500万円にも及ぶ着服を看過した監督上の違法があったとして、国家賠償法上の責任が問われたものです。

 前審の地裁は、家庭裁判所の責任は認めませんでしたが、高裁はこれを変更して231万円について次の理由で国家賠償法上の責任を認めました。
 まず後見人候補者が知的障害者であることに気づかず、後見人に選任して多額の財産管理をさせたことについては、後見人に選任した際、財産を横領することを認識していたと認めるに足る証拠はない。また、財産を横領することを容易に認識し得たということもできないとして、後見人選任上の責任は認めませんでした。
 また後見人選任の1年後、家庭裁判所が第一回目の後見監督をした際に、姪個人名義の口座に入っていた現金を後見人名義の口座に移し替えるよう指導し、姪はそれに従ったことから第一回目の後見監督時点で横領行為を容易に認識し得たということはできないとして、家庭裁判所に違法はないとしました。
 しかし第二回目の後見監督までの約1年間に、後見人は飲食費、遊興費、交際する男性の家の工事、知人への貸与などで3,500万円も費消してしまった。これに家庭裁判所は気づいており、後見人を解任すべきだったのですが、それを怠ったため横領発覚から7ヶ月経ってようやく預金口座の支払い停止措置がとられた。
 第二回目の後見監督以降について高裁は、家庭裁判所は職権で後見人を解任することができるが、これを防止する監督処分をしなかったことは、家事審判官に与えられた権限を逸脱して著しく合理性を欠くと認められる場合にあたり、国家賠償法の適用上違法になるとし、横領発覚以後の被害拡大について家庭裁判所の責任を認めました。

  本事案は交通事故の脳死という、本人の意思が関与しえない突発的な状況下での後見発動であり、多少なりとも時間的余裕がある老人の場合とは若干異なります。また後見人になったのが精神遅滞障害者であるのみならず、実はその母親(被害者の姉)も精神障害者で、後見人と母親が共謀して多額の金銭を費消してしまったという特殊なケースです。
  任意後見でも法定後見でも、親族側は裁判所や第三者からの介入を好まないと言われていますが、親族間の摩擦回避という見地から、後見プロセスのどこかに第三者の意見なり知見を反映させることが必要かと思われます。

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