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【事 案】 夫が妻に土地を与えると約束したが、その後夫婦関係が破綻したら約束を反故にできるか?

【結 論】 婚姻が実質的に破綻している場合には、契約を取り消すことは許されない。(最判S42.2.2)

 夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも夫婦の一方から取り消すことができると民法では決められています。そもそも契約は人と人との約束ですから、守るのが当然であって簡単に取り消せるのはおかしい。夫婦であっても約束した以上それは守るべきで、なぜこんな規定があるのでしょうか。
 一般的には、夫婦間だと情に流されて理不尽な約束をしがちだとか、片方が威圧して無理に約束させるケースが多々ある。あるいは、法は無闇に夫婦や家族の問題に立ち入るべきではないから、契約の効力を杓子定規にあてはめるべきではないなどと言われています。

 いずれの理由ももっともですが、では夫婦関係がどのような状態でも契約の取消しが許されるのでしょうか。
 この問題について裁判所は、民法でいう婚姻中とは、単に形式的に婚姻が継続していることではなく、形式的にも、実質的にもそれが継続していることをいうとしました。すなわち婚姻が破綻してからは、もはや契約の取り消しは主張できないということです。
 そうすると、例えば夫婦仲がよいときに妻に家を与える約束をした。しかし後に夫の暴力で夫婦関係が破綻したときに約束は取り消せるか。逆に、妻の浮気で夫婦関係が破綻したとしても約束は取り消せず、家を与えなければならないかといった疑問が生じます。
 前者のように、婚姻の破綻原因が夫の暴力であれば、判例でも述べているように夫からの契約取消しを認めるべきではなく、妻に家をあげる約束を果たさせるのが妥当だと言えます。

 一方、破綻原因が妻の浮気だったとしたら、夫に約束を守らせるのは酷ですから、夫の取消権は認めるべきと考えます。その理由づけとしては、妻からの契約履行請求は権利の濫用だとすることが考えられるでしょう。もっとも、夫婦関係が単に破綻しただけでなく離婚にまで至っている場合には、財産分与という別の問題となりますので、離婚手続のなかで処理するのが合理的かもしれません。
 ひとくちに夫婦関係の破綻といっても、その原因と状況は様々ですから、一概に判例に従って処理するわけにはいかない問題です。ただし民法にはこのような重大な例外規定を、夫婦間に置いていることに注意する必要があり、夫婦だからといって安易な約束はなさらないようにすべきかと思われます。

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