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【事 案】 つきまとい行為を何回かしただけで、ストーカー処罰されるか?

【結 論】  別々に定められているつきまとい行為でも、全体として反復していればストーカーとして処罰される。(東高H16.10.20)

 「ストーカー」と「つきまとい」は違います。
 ストーカー規制法は、「つきまとい行為」を「反復してする」のを処罰すると定めているからです(ストーカー行為等の規制等に関する法律)。同法で列挙されている「つきまとい行為」には、待ち伏せや被害者の行動の監視、粗野又は乱暴な言動、無言電話、名誉侵害、被害者の羞恥心を害する文書や図画の送付など8項目あり、これを反復して行ったときにストーカーとして処罰されるとしているのです。「つきまとい」は、ストーカーがする代表的な行為のひとつなのです。
 刑事罰がある規定ですから解釈は厳格でなければならず、つきまとい行為であっても反復しなければ、原則としてストーカーになりません。

 では特定の行為を反復したのではなく、8つに分けられている行為を跨いでしたときもストーカーとして処罰されるのでしょうか。ストーカー行為をすれば懲役6ヶ月以下、禁止命令に違反すれば1年以下の懲役刑を受けます。法に違反したかどうかは厳格に判断されなければならず、8つの項目を跨いでそれぞれ1回ずつやっただけでは、反復したとはいえないとも解釈できます。

 本事案では、被害者に数回手紙を投函した行為がストーカーだとして訴えられました。直接被害者宅の新聞受けに投函したこともあり、うち1回は被害者女性の裸体画像を含んでいたこともありましたので、悪質な部類とみられます。被告人側は、手紙の回数や間隔からみて反復して行ったとの要件は満たさない。手紙の内容は、被害者との関係を清算処理するため電話やメールの着信拒否指定解除を要望するもので、被害者に義務を要求したものではない。裸体写真もわいせつ牲がなく、同封した手紙には処分を被害者に委ねる旨記載されていたことなどを主張しました。

 これに対して裁判所は、本事案で手紙が投函されたのは4回にすぎないため、同種事犯に比べて多数回にわたるとはいえないとしつつも反復性を認めました。また、手紙の内容は一貫して電話やメールの着信拒否を解除するよう求めるものだから、義務のない行為を要求したことは明らかである。
 交際中に撮影した裸体写真と手紙を投函した行為は、被害者に不安を覚えさせるような方法によるもので、つきまとい行為が全体として反復されたと認められれば、それぞれ反復されていなくとも要件は満たされるとしてストーカーにあたるとしました。

 結局、被害者の身体の安全、住居等の平穏、名誉感情が害され、行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるようなもので、社会的に逸脱した「つきまとい」であり、8つの分類に跨った行為でも反復にあたるとしてストーカーと認定しました。たしかに、直接住居のポストに投函されたら行動を監視していたと疑われてもしかたないと思われますし、手紙に処分を被害者に委ねると書かれてあっても、裸体写真が同封されていれば黙示の脅しととられかねません。また、当事者間の関係を清算を主張していたとしても、被害者に不安を覚えさせるような書きぶりにすることはさほど難しくありません。

 さて、この事案をなぜ夫婦間の問題として紹介したかというと、ストーカー規制法とよく似たDV防止法(ドメスティック・バイオレンス防止法、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」)があるからです。DV防止法は暴力をした配偶者に対して、裁判所は8つの行為をしてはならないと命令することができると規定しています。ところがその8つの行為のうち、4つはストーカー防止法の行為と全く同じなのです。

 では、DV防止法とストーカー規制法はどこが違うのでしょうか。
 条文を比べてみると、DV防止法は内縁関係を含む配偶者や子、ないし支援者を相手方配偶者の暴力から保護するため、裁判所が保護命令を出すことができるという内容ですが、保護命令が出せるのは身体に対する暴力があった場合に限定されており、さらに裁判所への申立てが必要です。
 一方ストーカー規制法は、特定の者やその配偶者、親族及び関係者に対しては、何人であってもつきまとい行為をしてはならないとされ、警察が警告や禁止命令、仮の命令を出しますが、被害者は警察に申し出をすればよいだけです。

 ストーカー規制法はDV防止法よりも適用される範囲が広く、手続きも容易なので、ストーカー規制法のほうが使い勝手が良い、ストーカー規制法はDV防止法の補完的役割を担うとされている所以です。
 もっとシンプルに言えば、裁判所(司法)に頼むか警察(行政)に頼むかの違いでしょうか。
 相手があるはなしですから、行為内容、暴力の程度や緊急性、さらに救済されるべき配偶者の仕事や生活の状態を考慮しなければなりませんが、いずれにせよ警察の力を借りるなら、DV防止法より先にストーカー規制法を使うなど臨機応変に対応すべきです。

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