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【事 案】 夫の不倫を知ってから15年以上経っていても、不倫相手に慰謝料請求ができるか?

【結 論】 消滅時効が、離婚訴訟の判決確定から進行するような事情があれば、認められることがある。(東高判H10.12.21)

 不貞行為、いわゆる不倫は夫婦関係の貞操義務を侵害する不法行為ですから、不貞行為の相手に損害賠償や慰謝料を請求できます。ならば、いつまでもその請求ができるかというと、そうではありません。民法では不法行為による損害賠償の請求権は、損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅すると定めているからです。ちなみに不法行為から20年を経過したときも、時効で消滅してしまいます。

 では不倫という事実があったことを知り、かつ誰と不倫したか相手を知ったのち15年以上経っていたとしても、慰謝料請求はできるものなのか。それができるとなると、不法行為の消滅時効規定には意味がないことになってしまいそうです。
 この事案では、夫は昭和47年頃から不倫をし、その相手と同棲して外に子をつくった。妻も昭和57年頃には戸籍書類などで不倫の事実も不倫相手も知っていた。夫側は、妻が不倫の事実や相手を知ってから十数年も経っているのだから、不倫相手女性への慰謝料請求権は時効で消滅していると主張したものです。
 たしかに、不法行為の消滅時効は3年(あるいは20年の除斥期間)とされているので主張できないとも思われます。しかし裁判所は、離婚を命ずる判決が確定するなど、離婚が成立したときに初めて、離婚に至らせた第三者の行為が不法行為であることを知り、かつ、損害の発生を確実に知ったこととなると判示して、妻からの200万円の慰謝料請求を認めました。
 つまり、妻がする慰謝料請求の理由には、夫と相手女性との肉体関係や同棲による精神的苦痛がある。しかしさらに、その継続によって最終的に離婚をやむなくされるに至ったときには、妻はその継続状態を不法行為として主張できると理由づけました。

 これに対する判例には、一方の配偶者が同棲関係を知った時から、それまでの慰謝料請求権の消滅時効が進行するとしたものがありますが(最判H6.1.20)、本事案では裁判の決着がつくまでの期間も不法行為が継続していたとして、平成6年の判決を拡張したものと考えることができます。
 本事案の事情背景には、妻側が病気がちであること、夫が妊娠を避けずに不倫相手との間に子をもうけたこと、離婚を最後まで望んでいないにも関わらず離婚をやむなくされたことなどに対して、妻が強い憎しみを抱いており、それがために深刻で多大な精神的苦痛を被ったことがあります。
 この離婚裁判自体が、昭和60年の家庭裁判所への調停申立てから平成10年3月の最高裁判決確定まで、13年間にもわたり争われてきたものであり、長期にわたる裁判での妻側の精神的苦痛も大きかったと思われます。

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