全画面で読む     全画面を閉じる
【事 案】 内縁の夫の親の反対で、籍を入れずにいるうちに夫が死亡したら、財産分与請求できるか?

【結 論】 内縁関係では、相手が死亡したら財産分与請求はできない。(最判H12.3.10)

 たとえば子がいない内縁の夫婦がお店をやっており、女性がそれなりに商売に貢献していたとしても、夫が病気などで亡くなると、全ての財産は結婚を反対していた親にいってしまいます。可愛そうですが、内縁関係には遺産を相続する権利が無いからです。
 ならば、相続は無理だとしても、店を手伝って商売に貢献したのだからせめて財産分与は認めてもらえるかというと、これも認められないというのが裁判所の判断です。その理由は、死亡による内縁解消のとき、財産分与によって遺産清算の道を開くことは、相続による財産承継の構造の中に異質の契機を持ち込むもので、法の予定しないところである。また、死亡した配偶者の扶養義務が遺産の負担となって相続人に承継されるべきでない、との趣旨を裁判所は述べています。
 財産分与には婚姻や内縁関係の清算、残された相手方の扶養、そして慰謝料という三つの要素があります。このうち清算と扶養は相続の意義と共通しますが、相続は画一的に財産を処理すべき問題なのに対し、財産分与は夫婦間の一切の事情を考慮すべき問題だとされています。相続と財産分与は似ていますが全く別の制度です。
 たしかに、相続の場面に財産分与を持ち込むのは色々と不都合を生じかねません。例えば、ただでさえ争いになりかねない相続に、内縁の妻が財産分与してくださいと割り込んで来たら収拾がつかなくなるおそれもありますから、そう考えると妥当な判断かと思われます。

 これに対して死別ではなく協議離婚をしたときには、内縁関係であっても財産分与が認められることがあります(東家審S31.7.25)。離婚した相手の生活を保護すべき必要がありますから、婚姻に関する民法規定を内縁関係にも類推して適用しているからです。
 ただし財産分与請求をするにしても、内縁関係にあったこと、すなわち婚姻の意思があったことや、社会的に事実上の夫婦共同体を形成していたことを証明するのはかなり大変でしょう。

 法律の条文に書いてあるのは原則的な決まりですから、それを証明するには社会一般の常識にもとづけばさほど難しくはありません。例えば婚姻に関する法律上の保護を受けるには、戸籍謄本なり住民票を持っていけば良いだけのはなしです。これに対して法規範を条文の類推なり拡張なり解釈に委ねる、例えば内縁関係にあって婚姻の例外を認めてもらうときには、証明すべき項目や質も多数かつ精緻なものが求められます。同居の事実、同居に至る経緯、結婚しない理由、内縁が継続した期間、収入や費用負担の状況、周囲とのおつき合い状況、財産の内容、家業に対する貢献内容などを説明しなければなりません。
 内縁関係にせざるを得なかったのは、相手側親に結婚を反対されていたといったことも理由のひとつにはなるでしょうが、それだけでは足りません。婚姻は両性の合意のみに基いて成立するのですから。

 さて、本事案で夫を亡くした妻は相続も財産分与請求もできず、とても可愛そうなことになりそうです。仮にそのような相談を受けたらどうしましょうか。おそらく内縁関係を説明できる材料を集めることに加えて、妻は家業に貢献してきたのですから、不当利得返還や財産の共有持分などを主張するお手伝いをさせて頂くことになるでしょう。

当事務所がお手伝いします 不当利得返還の申し入れ、離婚の場合の財産分与申し入れ