全画面で読む     全画面を閉じる
【事 案】 離婚するときに財産分与がされた場合、その後でも慰謝料の請求ができるか?

【結 論】 財産分与と慰謝料は、その性質が必ずしも同じではないからできる。(最判S46.7.23)

 離婚したときに財産分与がされていたとしても、その後慰謝料の請求ができるかどうかが問題となりました。
 すでに財産を分け与えた夫からすれば離婚時のそれで十分であり、一件落着したとの思いは誰しもあるでしょう。それが後から慰謝料を請求され、決着したはなしを蒸し返されるのはたまらないとのことで争いになりました。
 裁判所は、財産分与の意義は共同財産の清算分配であり、離婚後の生計維持が目的だとしました。すなわち財産分与と慰謝料の意義を分け、慰謝料は離婚をやむなくされた精神的苦痛の代償であるとして、財産分与とは別のものだとしました。

 この事案で妻は夫と姑から冷遇され、さらに夫の暴行に耐えきれなくなったため離婚を決意した。したがって一刻も早く婚姻生活から抜け出すために、妻は当面の生活費を確保する必要があった。財産分与はそのために必要だったという事情がありました。そこでとりあえず生活ができる程度の財産は財産分与で確保し、その後生活が落ち着いたあとで精神的苦痛に対する慰謝料の請求をしたというもの。財産分与が認められなければいつまでも不遇の状態に置かれる可能性が大きかったわけですから、結論からみて妥当と言えましょう。

 一般的に、財産分与には夫婦の財産関係の清算、離婚に伴う損害の賠償、離婚後の配偶者の扶養という三つの性格があるとされています。そのいずれかが充足されていなければ、離婚した後でも財産分与を請求される可能性がありますし、本事案のように精神的苦痛があった場合には、その代償として慰謝料を請求されることがあります。仮に、夫側が財産分与も慰謝料も一度の手続できれいに清算して離婚したいというのであれば、そこは譲歩して、その旨合意書を作って公正証書にしておくべきです。

 ちなみに財産分与請求ができるのは、離婚の時から2年間。慰謝料請求の根拠が不法行為のときは損害及び加害者を知った時から3年間です。それぞれ起算点と期間が違いますから注意が必要です。

当事務所がお手伝いします 離婚協議の申し入れ、合意書作成、財産分与申し入れ