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【事 案】 処分禁止の仮処分登記がされている不動産の取引は認められるか?新ネタ

【結 論】 処分禁止の仮処分に違反する行為だとしても全面的に禁止されるものではなく、取引は認められる。(最判S45.9.8)

 権利を主張する債権者が、自己の権利を実現するためにはどうしたらよいか。例えば、建物の贈与を受けた者が所有権登記をする前に、当該建物が第三者に売却され第三者名義で登記されてしまうと面倒なことになります。
 そのようなときは、この建物はいま所有権を争っていますよということを公的に表す(公示する)ために、処分禁止の仮処分を裁判所に申立てて登記できます。
 その後、贈与があったかどうかの裁判で贈与契約が有効だという判決が得られれば、処分禁止の仮処分登記は抹消され、贈与を原因とする所有権移転登記がなされます。逆に贈与の裁判で負ければ、仮処分登記が抹消されて終わりです。

 では、処分禁止の仮処分登記がされている不動産の売買はできるのか。
 本事案では、土地所有権に基づく建物収去土地明渡請求権の執行を保全するため、建物処分禁止の仮処分命令を得て登記も済ませた。しかし建物所有者は第三者に建物を売り渡してしまった。そこで仮処分権利者(仮処分の申立者)は、処分禁止の仮処分命令に違反した建物売却はそもそも違法だと訴えたものです。

 これに対して裁判所は、建物所有権移転は処分禁止の仮処分命令に違反するものである。しかし処分禁止の仮処分命令は、この命令に違反してされた処分行為の相手方たる第三者の権利取得をもって、仮処分債権者の被保全権利に対抗することをえないものとする効果を生ずるにとどまる。第三者の権利取得が、仮処分命令の違反の故をもって全面的に否定されるべきものとなるわけではないとして、建物収去明渡し請求を却下、建物売買を認めました。

 すなわち処分禁止の仮処分命令が出され、登記がされていてもその物件の取引は認められるということです。なるほど仮処分は決着がついていない「仮」の権利が付着し保全されているにすぎず、登記簿に記載されているからといって裁判や和解で本登記になったり消えたりする不安定な登記です。どちらに転ぶか分からない状態ですから、一方的に権利を制限するのは妥当ではありません。
 とはいえ常識的にみればどちらに転ぶか分からない宙ぶらりんの状態ですから、訴訟継続中につき無闇に手を出すのは危険だとの認識を与える意味で、取引を抑制する効果は十分あります。

 仮差押えや仮処分は、金銭消費貸借や売買契約だけでなく離婚、相続、知的財産など様々な場面で顔を出す制度ですので、事案をみるうえで相当の注意を払う必要があります。

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