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【事 案】 マンションの一室を事務所目的で借りたとき、住居とは異なる原状回復義務を負うか?新ネタ

【結 論】 事務所として使った場合でも、居住用の賃貸契約に従うとされることがある。(東簡判H17.8.26)

 マンションを事務所として使う例は、とくに都心部に多くみられます。
 本来であれば間取りや設備あるいは人の動線など、事務所として計画されたビルに入居するのが望ましいのでしょうが、賃料や立地条件など条件に合った物件を見つけるのは大変です。
 そこで創業間もない、あるいは小規模な会社などはマンションの一室に事務所を置くことが多くなります。

 本事案で問題となったのは、居住用に建築されたマンションで、賃貸借契約書には契約が終了したときは賃借人がした造作その他を賃借人の負担で原状回復するとの条項があったが、敷金が返還されなかった。そこで賃借人が敷金返還を家主に請求したものです。
 なお本事案の賃料は12万8千円、敷金は2ヶ月分の25万7千円程度であり、4回更新をしたのち賃借人が契約解除をしたところ、原状回復費用として約41万円求められ敷金は返還されませんでした。

 賃借人は、現実に事務所用として借りて事務所として使っていたのですから、形式的にみれば居住用とは異なる契約条項に服すべきとも思われますが、裁判所は次のような判断をしました。
 一般にオフィスビルの賃貸借においては、契約終了に際し賃貸物件のクロスや床板、照明器具などを取り替え、場合によっては天井を塗り替えることまでの原状回復義務を課する旨の特約が多い。
 賃借人の保護を必要とする民間居住用賃貸住宅とは異なり、市場性原理と経済的合理性の支配するオフィスビルの賃貸借では、賃借人の建物の使用方法によっても異なり得る原状回復費用を、あらかじめ賃料に含めて徴収する方法をとらずに、賃借人に負担させる旨の特約を定めることは経済的にも合理性がある。
 しかし本件物件は、仕様は居住用の小規模マンション(賃貸面積34.64平米)であり、築年数も20年弱という中古物件である。事務所として利用するために設置した物は、コピー機及びパソコンであり、事務員も二人ということで、その実態において居住用の賃貸借契約と変わらず、これをオフィスビルの賃貸借契約と見ることは相当ではない。
 以上のことから、裁判所はこの契約を居住用マンションの賃貸借契約と捉えて、原状回復費用はガイドラインにそって算定し、敷金はこれに従って相殺されるべきとしました。

 すなわち不特定多数者が頻繁に出入りするでもなく、部屋を大規模に改装した訳でもない小規模な事務所で、住居とあまり変わらないような使い方をしていたのであれば、建物全体からみて他の住戸と同様に扱うのが妥当だということです。
 なおマンションに事務所が立地することの是非については、たしかに闇雲にこれを許すと住環境上の問題が生ずる可能性があります。一方、昼間に人が不在となったり、高齢化が進んだマンションでは防災や安全保持からみて一概に事務所立地が悪だとも言えません。
 マンションへの事務所立地はメリットもデメリットもあります。過密した都市部においては、住居も事務所も共存できるよう配慮しあえば、互いにメリットが享受できるのではないかと考えます。

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