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【事 案】 期間限定で部屋を貸すとき、契約終了後に契約更新がなく明渡すべきことは契約書だけに書いておけばよいか?

【結 論】 定期建物賃貸借契約は、契約書とは別の独立した書面で示さなければならない。(最判H24.9.13)

 物や不動産を賃料をとって貸し借りする契約を賃貸借契約といいますが、賃貸借契約は継続的な性格をもつと言われています。そして賃料の見直しはあるにせよ、当初から継続することが想定されており、原則として同じような条件で貸し借り関係が続くため、貸し手と借り手相互の信頼関係が重視されます。
 すなわち継続的な性格をもつということは、アパート、マンション、家など不動産の賃貸借でいえば直ちには解除できないということでもあります。今すぐ出て行けと言われても借り手は困るでしょうし、逆に明日出て行くと言われても貸し手が困ります。そこで民法は、特別な決まりを借地借家法に設けて借り手と貸し手の利益調整を図っています。

 借地借家法では、どちらかといえば借り手の利益が優先されていますが、例外的に貸し手の利益を考えた条項もあります。そのひとつが定期借地、定期借家です。大家はむやみに借家人に出て行けとは言えないのですが、例えば大家が転勤している間だけ部屋を貸したい、あるいは建物が古くなったので建て替えたいといった場合には、貸す期間を限定できるという決まりです。
 ただし、貸し手である地主や大家を有利に扱うのは例外ですから、契約を結ぶときの要件はより厳しいものになります。例えば定期建物賃貸借をするには要件が2つあり、第一に契約は公正証書によるなど書面でしなければなりません。さらに二番目として、契約の更新がなく期間満了によって建物の賃貸借が終了することについて、貸し手である大家はその旨を記載した書面を契約書とは別に、あらかじめ借り手に交付して説明しなければならないとされているのです。

 本事案で大家は、5年間の定期建物賃貸借だということを契約書の原案に書いて借り手に送った。このため定期建物賃貸借であることは借り手も認識していたのだから、5年経って契約期間が終了したら当然に更新の必要はなく、建物を明け渡せと言えると主張しました。
 ここで問題となったのは、前述の第二番目の要件である説明書面は、あらかじめ借り手に送付した契約書原案でよいのか、あるいは契約書とは全く別個のものでなければならないのかということです。

 この事案について高等裁判所は、契約の更新がないということは契約書に明記されている。また、事前に契約書の原案を送付され内容を検討していたから、更に別個の書面を交付する必要性は極めて低い。したがって契約は有効、5年間で期間は満了して賃貸借契約は終了するとしました。
 しかし最高裁は、第二番目の書面は賃借人が5年間の期間満了で契約が終了すると認識しているか否かにかかわらず、契約書とは別個独立の書面であることを要するとして、高裁の判決をひっくり返しました。
 つまり、契約書に書かれていたとしてもそれだけでは足りないし、契約書の原案でも足りない。契約書とは別個の書面と説明をあらかじめ必要とした趣旨は、賃借人になろうとする者に、契約の更新がなく期間の満了により終了することを理解させるだけでなく、紛争の発生を未然に防止することにあると判断したものです。

 たしかに建物を明け渡して引っ越すのは、居住用でも大きな負担となります。まして事業用物件になると、引っ越し費用のみならず営業で築いた顧客の扱いや器材の処理、印刷物などまで費用がかかりますので、相応の負担を大家に認めてもらう必要があります。
 第二の書面を、契約書とは別に求める理由もそこにあると考えます。大家側が建物を必要とする事情、賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況や建物の現況、新たな移転先や立ち退き料などについて、第二の書面で賃借人と合意しておくことが、その後の処理を円滑に進める大きなポイントになると考えます。

 定期という二文字を、契約前の書面でどの程度説明するかにもよりますが、賃貸借契約を更新しないということはかなり厳しく判断されます。
 なお、賃料不払いを理由にアパートの鍵を交換してしまい、賃借人を閉め出してしまった事案の顛末については、当サイトの消費者問題【生活012】をご一読ください。

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