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【事 案】 隣地との境界に塀を設けるとき、工事費はどちらが負担すべきか?

【結 論】 土地の境界標や囲障(いしょう:塀)の設置工事費は両土地所有者で折半できる。(東地判H23.7.15)

 隣家との間にある塀が古くなったり、家を新築するときに塀も新しくするケースは多いと思われます。
 そのとき塀の工事を相手に請求できるか、工事費は誰が負担するかが近隣問題になりかねません。

 本事案は隣家が原告の土地を侵害し、駐車場として使い始めた。そこで原告が境界標と塀の設置を隣家に請求したが、隣家はこれに応じなかったので裁判になったものです。
 被告である隣家は、駐車場を整備してからすでに10年以上経っているので、黙示の通行地役権を時効取得している。境界標や塀の設置を、事前の協議なくして裁判に訴えられたのは権利濫用にあたるなどと主張しました。

 これに対して裁判所は、地役権の時効取得は、継続的に使用され、かつ外形上認識することができるものに限って認められる。
 時効取得をする側(要役地の所有者である隣家)によって、時効取得される側の土地(原告の承役地)の上に通路が開設されたものであることの2点が必要だとしました。
 本事案では、隣家が原告の土地の一部に駐車場の舗装をし、通行していたことに原告が異議を述べなかったとしても、地役権が黙示に設定されていたものと認めることはできないとして、地役権の時効取得を認めませんでした。

 次に、事前の協議なしに境界標や塀の設置を請求することが権利濫用にあたるかです。
 民法では、隣地の所有者と共同の費用で境界標や塀を設けることができるとしており、協議が調わないときは板塀や竹垣その他これらに類する(すなわち標準的な仕様の)ものとしています。
 本事案では、実は事前の協議が無かったわけではなく、一度原告側が隣家に兵の設置を申し入れたが、材質や形状で合意に至らなかった経緯がありました。
 そこで裁判所は、原告が被告を害する意図をもって権利を行使したとは認められず、権利濫用や訴権濫用にはあたらないとしました。

 以上のことから、両者で費用を折半し、原告の申し立てどおり境界標を設け、隣家が整備した駐車場の上に既存の塀を連続して建設することを認めました。

 民法は、ご近所間の紛争をあらかじめ防止するために、いくつかの規定を置いています。
 そのひとつが土地の境界標や塀に関する規定で、原則として、お隣との敷地境界の上に費用折半の共有で設けることができるとされています。
 共有の場合、塀に細工を施したり洗濯物を干すなど片方が勝手に使うことはできず、修繕費なども折半になります。
 また塀を新しく建設するときは、事前協議がとても大切です。

 したがって境界標や塀を新設したり改修するときは、それを隣家に連絡し、材質や設置場所、構造、かかる費用の負担方法などについて隣家と調整する必要があります。
 隣家との話し合いがうまくいかなかったときは、自前の土地に自分の費用で建設することも想定して進めることが、近隣と円満に生活するために賢明なことかと思われます。

 隣家と共有で建設すれば敷地が有効に使える、建設費用が軽減できる、敷地境界の明確性が維持できるメリットがあります。
 その反面、構造や材料、デザインが自由にできない、維持管理や使い勝手が制限される、隣家との調整に時間と手間がかかるデメリットがありますので、これらをよく考えた上で建設計画を立てるべきです。

当事務所がお手伝いします境界標や塀工事の申し入れ、材質や仕様の調整、承諾書・示談書・和解書作成