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【事 案】 インターネットで、マンション建築会社の行為を批判すると名誉毀損になるか?

【結 論】 事実を具体的に指摘して社会的評価を低下させると、名誉毀損になることがある。(横地判H15.9.24)

 掲示板などインターネット上の書き込みは匿名性が高く、かつては名誉毀損など人権侵害行為が横行していると言われていました。
 しかし最近は、プロバイダ法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)が定着したためか、掲示板などの利用者も相応の注意を払っているとみられます。もっとも、海外のサーバーを経由するといった発信者情報の隠蔽手段もあり、まだまだ課題は残っています。

 本事案は地上7階、地下3階のマンション建設に反対した近隣住民が、建築会社の名誉及び信用を毀損したとして約1,100万円の損害賠償と謝罪広告を求められたものです。
 建設予定地は第一種住居地域に指定されており、住民側は建築会社に建築協定に加入するよう申し入れたが拒否された。そこでマンション建設に反対する看板や横断幕を設置するとともに、自治会機関紙やインターネットで建設反対の意見を表明したものです。
 反対意見の内容は、建築予定地は過去に崖崩れを起こした危険地である、建築協定地域内での10階建てマンションはもってのほかである、住民説明が不十分であるといったものでした。

 以上の表現につき裁判所は、危険地であるとの指摘は、危険なマンションを建築しようとしているなどと主張しているものではない。
 建築協定は任意加入であるから、建築会社に建築協定違反の事実があることを摘示したものではない。
 住民への説明が不十分というのは、住民側からは十分に納得できる内容のものではないとの趣旨を述べたにすぎないとして、いずれも会社の社会的評価を低下させたとはいえないとして、会社の請求を認めませんでした。

 ところで人の名誉は、憲法はもとより、民法でも、刑法でも保護されており、会社の名誉も同様に保護されます。
 そして民法でも刑法でも、保護されるべき名誉とは客観的な社会的評価であるとされています。
 もっとも名誉を毀損する違法な行為であっても、公共の利害にかかる事実かつ公益目的、事実の真実性の証明があったとき、あるいは論評としての域を逸脱しなければ不法行為にあたらない(違法性が阻却される)とされています。これは個人の名誉と表現の自由を比べて、公益すなわち公共の福祉を優先しようとするものです。

 本事案で住民側は、書き込みの表現行為は事実の公共、公益目的である(違法性が阻却される)と主張しました。
 裁判所も、住民説明が不十分であるとの主張については、住民との約束に違反したとの表現と結びつけば会社の社会的評価を低下させる、すなわち違法性を帯びる。しかし仮に違法であっても、住民側の主張は事実の公共、公益目的であるとして違法性阻却に触れています。
 以上からすると、例えば建築計画が不備で危険なマンションであるとか、住民との建築協定に違反しているとか、会社が住民との約束に違反したとか、事実を具体的に指摘する表現をしてしまうと会社の名誉を毀損したとされるおそれがあります。
 そうなると住民側は会社に損害賠償をしなければなりませんが、ただしその指摘が事実の公共、公益目的、事実の真実であって論評としての域を出ていなければ、違法性が阻却されて損害賠償責任は負う必要はないとの結論もあり得ます。

 いずれにせよ、住民運動だからといって全て公共公益性があるとして許されることにはなりませんので、表現内容には注意すべき必要があります。

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