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【事 案】 ローン特約条項が無い売買契約でローン審査が否認されたとき、手付金は返してもらえるか?

【結 論】 ローン特約条項が無い売買契約でローン審査が否認されたとき、手付金は返してもらえるか?

【結  論】審査否認で契約が白紙になることを仲介業者が認識していたときは、返してもらえる場合がある。(大高判H12.5.19)

 現金即決払いを除き、土地建物を買うときは公的融資を受けたり銀行のローンを使って返済することになります。一般的には金融機関の仮審査、(手付けを払って)売買契約、本審査という手続の流れになるでしょう。
 仮審査が通って売買契約をしたものの、本審査が銀行から否認されてローンが組めなくなったときどうなるか。その場合には手付金を返してもらえるかが問題になります。
 形式的にみれば、買主は手付金をあきらめて売買契約を解除することになりそうですが、それではあまりにも不動産取引の素人である買主に酷です。

 そこで不動産売買契約では、融資利用の特約による解除条項(いわゆるローン特約)を設け、ローンが通らなかったときは、買主は売主に預けた金員(手付け及び中間金など)を返してもらえるのが一般的です。
 本事案は金融機関から融資を否認された買主が、売買契約書にローン特約が無かったから仲介業者に注意義務違反があったとして、宅地建物取引業保証協会に対して手付金相当額の認証を求めたものです。
 第一審は買主の主張を認めませんでした。しかし高裁は、ローンがなければ契約が白紙になることを仲介業者は十分認識していたはずで、特約が付されるべきとの黙示の合意があった。買主は不動産取引経験のない一般消費者であり、資金計画も詳細に説明していたので、仲介業者は買主のためにローン特約を付すべき注意義務があったとして手付金の返還を認めました。

 不動産売買契約は、競合する他の買主に先んじて購入を決めたい消費者と、売却を決めて仲介手数料をとりたい業者の利害を調整するものです。しかし金融機関の審査にとおるか否かは、買主にとって極めて重大な問題です。審査がとおらなければ手付金を取り戻せるとのローン特約は、消費者保護の立場からみて重要なものです。
 したがって消費者保護の趣旨からすれば、この条項はできるだけシンプルにするのが原則であり、シンプルなほど良心的な不動産業者だといえます。
 ただ常に買主が無条件で契約を解除して手付金をとり戻せるとなると、契約はしたものの後で単に後悔しただけで解除するとか、契約時に虚偽の申し出をしたような者まで保護することになって、取引の安全や契約の法的安定性を害します。
 そこでローン特約を排除する例外規定が、特約の後ろに但し書きでつけられることになります。
 例えば買主が自己都合で退職したとか、契約書や融資申込書に虚偽を記載したなど金融機関からみて本審査をとおすには与信力上問題がある場合です。そのようなケースでは、特約は排除されて手付金は戻ってこないことになります。

 しかしあまりにも買主の利益を害する厳しい例外規定は、特約の趣旨を害するので問題があります。
 買主はローン特約条項にあいまいな表現は無いか、例外規定が厳しすぎないか、全体としてシンプルかどうかをよく見て業者の質を判断する必要があります。
 一方、買主も高額な手付け金を払って契約を結ぶのですから、没収されないよう契約時の虚偽申告、本審査がとおるまでの新規にローンを組むなどの行為は避けなければなりません。
 また、本審査が認められなかったときの通知は内容証明でするなど、慎重な立ち振る舞いが必要になります。

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