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【事 案】 借金や代金を払えと催告し続ければ、消滅時効の主張を封じ込められるか?

【結 論】 内容証明や督促状で催告を繰り返しただけでは、消滅時効の主張を封じ込められない。(大判大8.6.30)

 時効はある一定期間が経過すると、主張できる権利が消滅したり、そもそも無い権利が発生したりする不思議な制度です。その根拠は長期間永続した一定の事実状態の保護だとか、権利の上に眠っている者には法の保護を与えないとか、権利関係の立証困難を救済するものだとされています。
 ならば請求書を送ったり内容証明による支払督促を続けていれば、権利の上に眠っているとはいえないので、債務者は消滅時効を主張できないのではないか。
 現に民法は、催告は六箇月以内に裁判上の請求や差押えなどをしなければ時効の中断の効力を生じないと定めており、6ヶ月以内に催告をし続ければ消滅時効にはかからないとも読めます。6ヶ月以内の催告を繰り返していれば、本当に消滅時効の主張を封じ込められるのか。

 これに対して裁判所は、弁済の督促(催告)をしたにとどまる場合には、時効中断されたとはいえないとしました。
 この問題を理解するには、まず民法でいう催告と請求との違いを正しく把握する必要があります。
 民法でいう催告とは、単に弁済しろと請求する行為のことでその手段は問いません。電話でもよいし請求書や督促状を送付してもよいし、内容証明郵便でもおなじことです。
 一方請求とは、裁判所が何らかのかたちで関与する手続をいいます。そして時効が振り出しにもどる時効の中断は、裁判所が関与する請求についてのみ認められているのです。(なお時効の中断は、請求以外にも差押え、仮差押え又は仮処分、承認でも認められています。)

 例えば、1年で消滅時効にかかる飲み屋のツケでみるとこうなります。
 平成25年12月25日にツケで飲んだ客に、まず翌平成26年1月31日に電話で催促した。払わないので6月30日に督促状を送った。それでも払わないので、11月に配達記録付きの内容証明で催告し客が11月30日に受領した。
 この場合、内容証明が到達してから6ヶ月間、すなわち平成27年5月30日までの間に裁判所に訴えないと、時効中断の効果は得られないことになります。
 6ヶ月の間に裁判所に訴えを提起し、支払えとの判決が出て確定したら、今度は確定のときから10年間の時効期間がはじまることになります。

 以上を分かりやすく整理すると、一般的には消滅時効にかかる直前にした催告だけが6ヶ月の猶予期間という特典を得られることになります。そもそも催告する側も、6ヶ月の猶予期間を狙ってするのでしょうから、これは法の趣旨にも合致しています。
 ならばそれ以前にした電話での催促や督促状が無駄かといえば、それで払ってもらえるのであれば何の問題もありませんから、全て無駄とは言えないでしょう。
 ただし消滅時効を回避するための催告は繰り返すことはできず、一回限りと考える必要があります。さらに裁判での証拠にすることを前提にする催告ですから、内容証明など証明力がある方法ですべきだというのがここまでの結論です。

 では電話での催告や督促状、あるいは内容証明受領後6ヶ月以内に、客の方から一部支払いがあったり、支払いをちょっと待ってくれと申し出があったときはどうなるでしょうか。
 この場合には債務の承認にあたりますので、法律上の時効中断効力が発生して消滅時効は振り出しにもどります。
 その意味でも、電話での催告や督促状が全て無駄とはいえません。ただし一部支払いがあったことの証拠や弁済を待ってくれという債務者からの申し出は、後日の証拠にするため、入金記録や書面での回答を求めるなどきちんと処理しておく必要があります。

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