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【事 案】 夫がパソコンとソフトのリース契約をしたとき、相続した妻はクーリング・オフできるか?

【結 論】  営業のために若しくは営業として締結された場合は、クーリング・オフできない。(東地判H22.3.24)

 個人事業や中小規模の事業所を経営していると、色々な営業の勧誘電話がかかってきます。最近多いのがポータルサイトに登録しませんかというものや、いわゆるSEO(Search Engine Optimization)対策の勧誘。
 前者は業種別、エリア別に企業を紹介するサイトに加入を勧めるもので、そのサイト自体が特定のキーワード検索で上位にランクインしているのが売り。後者は、クライアントのホームページそのものの検索順位を上げるサービス。ホームページを公開する以上検索エンジンに嫌われてしまうのは不本意だし、より多くの閲覧者を得たいと、いきおい継続的契約をしてしまうと思わぬ落とし穴があるようです。

 似たような問題がないかと調べてみたら、かつては事務所用電話機のリースが問題になったようですが、本事案はパソコンとソフトのリース契約をした設計事務所の経営者が亡くなり、これを相続した妻がクーリング・オフしようとしたものです。
 契約者は個人で設計事務所を経営していましたが、数年間病気を患って事務所は休業状態。その後事務所を再開したいと、パソコン本体と設計ソフトのリース契約を近所の喫茶店で結びました。しかし契約から約半年後に契約者が死亡してしまったため、相続した妻にリース物件の支払請求書がまわってきた次第です。

 契約内容はパソコンとソフトで総額約132万円、期間は5年間、月額約2万円ずつ支払うというものでした。
 契約書には「営業のために若しくは営業として」締結されたものは特定商取引法のクーリング・オフができないこと、リース期間満了まで契約解除ができないこと、支払を怠ったときには残リース代金と損害金を支払うことが記載されていました。

 亡夫を相続した妻は、契約が営業所以外の喫茶店でされたのでクーリング・オフができると主張しました。また、妻は設計士の資格をもっていないので事務所の営業はできないのだから、リース物件を使用する利益がない者に対してまで営業のためという理由で、クーリング・オフや契約解除ができないとする約定は、公序良俗に反して無効だと主張しました。
 これに対して裁判所は、契約当時病気のため営業しておらず妻に内緒で契約したとしても、当該契約は営業再開に備えた営業準備行為にあたり、営業のために若しくは営業として行ったものだと認定して、相続人である妻からのクーリング・オフを認めませんでした。
 また、本事案のリースは金融的側面をもつファイナンス・リースであり、契約締結後に債務者側の事情でリース物件が不要となったときでも、契約解除を制限する約定が公序良俗に反するとまではいえないとしました。

 別の事案ではクーリング・オフが認められたものもあります。
 例えば営業をほとんどしていない個人事業主に多機能電話機をリースさせたケースでは、契約解除に関する書面(特定商取引法5条書面)が交付されておらず、事業主はクーリング・オフができないことを十分理解できていなかったとして、クーリング・オフを有効だとしました(東地判H20.7.29)。

 また高機能ビジネスフォンの営業マンがクーリング・オフできない場合があることを知りつつ、零細事業者に5条書面を欠く契約をさせたケースでクーリング・オフを認めています(名高判H19.11.19)。
 一応、事業所に従業員がいるか、契約者の所得と事業収入の関係、物件が事業経営にどの程度役に立っていたかなどが問題とされていますが、契約解除に関する特商法の規定が契約書に明示されている場合には、営業のためにしたものと推定されてしまうようです。

 冒頭に述べたように、近時は物のリースからソフトウェアやホームページ製作など、効果測定が難しいサービスの継続的契約に移り、ターゲットも事業者だけでなく一般消費者ができる通信販売や各種サロンなどに拡大されているようです。

 月々の負担はさほど大きくなくとも、継続的契約では最終的に100万円単位になるものが多くみられます。事務所経営やビジネスを始めるにあたっては、継続的に出費を余儀なくされる家賃や水光熱費、リース代などの固定費をいかに押さえるかはとても大事です。効果対費用も十分に考えて契約する必要があります。

当事務所がお手伝いします 契約内容の調査、契約過程の記録作成、クーリング・オフの申し入れ、解除の申し入れ、示談書や合意書の作成、事務所経営コンサルティング