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【事 案】 入れ墨を体に彫った当人が、体の画像を無断で公表したら著作権を害するか?

【結 論】 入れ墨の画像に創作性が認められるときは、著作権を害することがある。(東高判H24.1.31)

 入れ墨をすることの肯否はさておき、著作権の問題として興味深い判例です。
 本事案で、入れ墨を施術した彫物師から訴えられたのは、左大腿部に十一面観音像の入れ墨を入れた当人と、その画像を使った書籍を発行した出版社です。さらに当人は自分のホームページでも当該画像を公開しましたが、書籍にもホームページにも彫物師の氏名が表示されておらず、また画像を反転させセピア色に変更していたことが著作権侵害にあたるとされました。

 入れ墨をした当人は、入れ墨の画像は仏像が載っている他の出版物を模写したものであり、創作的な表現とはいえない。入れ墨は自分の体に彫られたものなので、彫物師との共同著作物にあたる。彫物師の許諾を得ない限り、自己の身体の利用ができないのは社会通念に照らし不合理であるなどと主張しました。
 これに対して彫物師は、下絵をもとに手数を重ねて完成させたものであり、創作性を否定する余地はない。当人は観音像の顔の表情などについて希望は述べたが、入れ墨の創作への関与はなく共同著作物に当たらない。画像を改変して書籍等に掲載することは、許されるものではないなどと反論しました。

 裁判所は以上の点について、元々の仏像の写真と入れ墨の顔を比較すると、両者には墨の濃淡によって表情の特徴や立体感を表すための工夫がされており、思想、感情の創作的な表現がなされている。当人が入れ墨の作成に、創作的に関与したことを認めることはできない。書籍に掲載することがふさわしくない事情があるからといって、入れ墨を改変して書籍に掲載することが 「やむを得ない改変」 に該当するとして、掲載が許されるものではない。
 以上のことから、書籍やホームページに入れ墨の画像を使ったことは、著作物の氏名表示権と同一性保持権を侵害する過失があるとしました。

 現に自分の体にあるものを表現する自由、共同著作物にあたるとの主張はもっともだとも思われますが、その製作過程において工夫された彫物師の思想や感情も尊重する必要もあります。自分が独占して占有している場合であっても、著作権の帰属はどこにあって、利用するにはどのような制限があるのかを十分意識する必要があります。入れ墨に限らず、著作権の扱いはなかなか難しいと考えさせられる事案です。

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