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【事 案】 公益法人は、企業市民白書という商品(出版物)を商標登録できるか?

【結 論】 公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがあるため、商標登録できない。(東高判H21.5.8)

 企業の社会貢献活動やNPOなどの事業を支援している公益法人が、印刷物に「企業市民白書」というタイトルを使い、さらにこれを商標登録出願した。しかし「白書」は、政府機関が発行した刊行物であると一般国民から誤認されるおそれがあるとの理由で、出願が認められなかった事案です。

 商標登録出願が認められなかった公益法人側の主張は、標題に「白書」の文字が付された刊行物が公益法人や民間からも出版されており、出版物として一般化している。政府発行の「白書」の名称は、法令に基づくものではなく、国民一般に広く受け入れられたものではないなどとして、政府機関発行の刊行物であるかのように誤認されるおそれは全くないとしました。
 たしかに本屋で書籍を眺めたりインターネットで検索すると、中央省庁の編集・発行に係わらない「東京都の住宅白書」、マンガにも「あすなろ白書」、「13(サーティーン)恋愛白書」などを見つけることができます。

 これに対して裁判所は、政府発行の「白書」は、昭和38年の事務次官等会議申合せに基づくものであり、内容や編集及び公表についての責任体制や手続が定められたものである。マンガなどは政府刊行物としての白書ではないことがたやすく見て取れるもので、それらが存在するからといって、(政府刊行物に対する)一般国民の「白書」に対する認識自体が影響を被るものということはできない。「白書」という商標を印刷物に使用した場合、政府発行の刊行物であるかの如く誤認するおそれがあり、公の秩序又は善良な風俗を害するという趣旨を述べて「白書」の商標登録を認めませんでした。

 「白書」だけなら、政府発行以外にも相当数の出版物は出ていますが、頭に「企業市民」がついた場合には、経済・社会の実態に密接に関連するものであり、政府の後見的な政策の余地も考えられるとした裁判所の見解は妥当と考えます。
 当職も、シンクタンクや公益法人在職時代には政府刊行物センターに足繁く通って、政府刊行物としての白書にはお世話になった記憶があります。やはり一般的にみて「白書」の冠には権威と信頼があり、東京都が刊行した白書はその名に相応しく、一方マンガでは権威をパロディ化したものと思われます。

 本事案の刊行物は、現在公益法人として活動している団体が発行したものですが、公益法人であっても白書という冠を使った印刷物を商標登録することまでは許されなかったことに意味があります。
 冠といえば、平成20年からの制度改革で社団・財団法人の公益性が見直されました。定款内容にもよりますが、一般社団法人や一般財団法人には非営利性が求められず設立も容易になりましたので、従来抱いていた公益法人のイメージとはやや違う性格になったと言えます。また、最近NPOがもてはやされていますが、非営利団体(Non Profit Organization)だからといって、全てが善意の団体であるとは限りません。
 名前や冠、あるいは名を連ねた理事などの肩書きに惑わされないように、十分注意しなければならない時代になってきています。

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