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【事 案】 新規に参入してきた企業のホームページが、表現内容で著作権を侵害していると先発企業は主張できるか?

【結 論】 創作性のない部分において同一性を有するにすぎないときは、著作権侵害とはいえない。(知高H23.5.26)

 パソコンのハードディスクから誤ってデータを消してしまったり、ディスクが壊れたときにデータを復元するデータ復旧というサービスがあります。
 単に消去してしまった場合(論理障害)なら市販のソフトウェアで復旧できるケースが多いですが、物理的に壊れてしまった(物理障害)ときは、お金はかかりますが専門業者に頼るしかありません。パソコンが相当普及した現代において、有力なビジネスとして注目されています。

 本事案は、大手企業がデータ復旧サービス事業に参入した際に作成した営業用のホームページが、先に同様のサービスを行っていた企業のホームページの表現を無断で複製又は翻案したものだとして、著作権侵害に問われたものです。

 著作権を侵害されたという企業が、表現が類似すると主張した比較表を判例から引用してみました。表の左側は侵害されたと主張した会社、右側は後から参入した会社です。

 まず裁判所は、著作物の複製とは既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足るものを再製することをいい、既存の著作物と同一性のあるものを作成することであるが、その同一性の程度については完全に同一である場合のみでなく、実質的に同一である場合も含むとしました。
 また翻案とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が、既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接体得することのできる、別の著作物を創作する行為と定義しました。

 すなわち、複製も翻案も既存の著作物に依拠する点では同じですが、複製は少なくとも実質的に同一であること。翻案は別の著作物ではあるが、既存の著作物の本質的な特徴を直接体得できるという点で、両者の性格はやや異なります。

 一方で著作権法は、思想又は感情の創作的な表現を保護するものです。よって表現それ自体でない部分や表現上の創作性がない部分において、既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には、複製にも翻案にもあたらないとされます。
 さらにデータ復旧サービスが新しい知見であったとしても、単なる事実や思想等についてありふれた表現にすぎない場合や、一般的に使用されるありふれた言葉を選択し、組み合わせたにすぎない場合には、その選択と組み合わせに創作性を認めることはできないとしました。

 結局本事案は、著作権侵害を主張した企業のホームページは、公告用文章でひろく用いられている一般的な表現手法にとどまり、作成者の個性が現れているとまでいうことはできないとの理由で、上の比較表で問題とされた表現は、すべて複製権、翻案権を侵害するものではないとしています。

 先に事業をはじめた企業は、それなりに工夫してホームページの表現内容を決めたといえますが、複製か翻案か以前にそれが著作物にあたるかどうか、一般的な表現手法かどうかが決め手になりそうです。仮に著作権侵害にあたるとされたとき、将来一般的な表現ができなくなってしまう可能性を排除した点で、知財004の事案と共通しています。

 ホームページに限らず他の公告、書籍などの著作物でもおなじですが、どこまでなら許容されるか著作権法の原点に立ち返って考える必要があるという点で参考になる事案です。

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