全画面で読む     全画面を閉じる
【事 案】 毎日変わる花の写真集著作権を取得した通信会社が、毎日配信しなかったとき著作者人格権を侵害するか?

【結 論】 撮影者の同一性保持権及び、毎日配信されるとの期待権を侵害したとはいえない。(知高H20.6.23)

 著作権には財産権と人格権という2つの顔があります。
 財産権には複製する権利、展示・上演する権利、公衆に送信する権利などがあり、財産として扱われるので譲渡することができます。一方の人格権には公表する権利、著作者名を公表する権利、著作物の内容などの同一性を保持する権利があり、人に接着した権利なので譲渡することはできません。

 この事案では、写真家が撮って編集した365枚の写真を、携帯電話の待ち受け画面として273万円余りで通信会社に譲渡したが、毎日でなく週に一度しか配信されなかった。写真は365枚がワンセットであり、配列した順序に従い日めくりで各花の写真を配信・使用してもらうコンセプトのものであるから、週に一度しか配信しないのは著作物の同一性ないし期待権を侵害すると写真家は主張しました。

 一方通信会社は、花と同時に配信していた動物や風景のシリーズも週に一度で、毎日更新するには多額の費用がかかる。毎日掲載でないと画像は使わせない、あるいは必ず毎日掲載するとの契約を交わしているわけではないなどと反論したものです。

 本事案の争点は編集著作物性、同一性保持権、期待権の3つですが、裁判所はこれらについて次のように判示しました。
 第一番目の編集著作物性については、自然写真家としての豊富な経験を有する写真家が季節、年中行事、花言葉当に照らして選択、配列したものであるから編集著作物性は肯定できる。
 第二番目の同一性保持権については、写真集の個々の写真の著作物及び全体についての編集著作権の譲渡を受けた通信会社が、7枚に1枚の割合で一部を使用しているもので、写真の内容に変更を加えたものではなく、著作権法にいう変更、切除その他の改変にはあたらないとして侵害を認めませんでした。
 第三番目の期待権については、譲渡契約時点でサイトの更新が週1回であることを写真家は認識していたものであり、契約書にも具体的な配信方法の記載はないとして、期待を抱くことが正当と認められる事情はないと判示しました。

 以上のことから、写真全体について編集著作物性については認められたものの、写真家の主張する同一性保持権と期待権の侵害については認められませんでした。
 大事なことは著作権には譲渡できる部分とそうでない部分があり、したがって契約書を作るときには著作権は二つの顔をもつことに十分注意しなければなりません。譲渡する側と譲渡を受ける側において、作品をどのような意図で作ったのか、作品がどう使われるのか、使うにあたってどのような処理を施すのかなど、事前に十分了解し合い意思の齟齬がないようにする必要があります。

当事務所がお手伝いします著作権についてのコンサルティング、著作権に関する契約書の作成、損害賠償申し入れ、示談・合意書作成