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【事 案】 会社の不正を内部告発して不当な扱いをされたとき、損害賠償請求ができるか?

【結 論】 内部告発に対する報復として不利益な扱いをしたときは、損害賠償請求できる。(富地判H117.2.23)

 個人の尊重の意識が高まるにつれ、セクシャルハラスメント、パワーハラスメント、モラルハラスメントなど色々取り沙汰されており、その数は20以上にもなると言われています。
 このうちセクハラは裁判例も多くありますので、ここでは会社ぐるみで行われたパワーハラスメントについてみてみます。

 本事案は、従業員のひとりが報道機関を通じてトラック業界のヤミカルテルを内部告発したが、会社側が報復措置として従業員の昇格を止め、配属や転勤を命じて仕事を与えず、さらに暴力団を使って脅迫などをさせて退職を迫ったものです。
 ハラスメントの期間は30年間にも及び、その間国会などでも取り上げられましたのでご存じの方も多いと思われます。この間従業員は研修所の草刈りや教室の片付け、台帳の整理などの仕事しか与えられなかった。そこで上記の措置は雇用契約上の付随的義務に違反する債務不履行だと主張し、損害賠償と慰謝料を会社に請求したものです。

 この事案について裁判所は、ヤミカルテルは独禁法に違反する可能性が極めて強いものであり、告発に係る事実が真実であると信ずるに足りる合理的理由があった。告発内容に公益性が認められ、その動機も公益を実現する目的である。告発方法も副社長に直訴した点で唐突にすぎるきらいはあるが不当とまではいえず、内部告発は正当な行為であって法的保護に値するとしました。

 結局、従業員の主張が認められ損害賠償約1,000万円、慰謝料200万円、弁護士費用110万円を会社が支払うことになりました。ただし同判決では謝罪文の交付が認められなかったため、その後従業員が高裁に控訴し、会社側がさらに賠償金を上乗せして謝罪文を交付することで和解し、決着したとのことです。

 本事案のハラスメントは内部告発を端緒としてなされたものであり、そうするとこの事案は企業のコンプライアンスとも関係します。企業コンプライアンスというと、会社と反社会的勢力との関係のみ取り沙汰されがちですが、コンプライアンスとは法令遵守を意味しますので反社会勢力との関係だけでは足りません。

 会社法にもあるとおり、コンプライアンスは主として内部統制システムに依拠し、その決定は代表取締役ではなく取締役会の専権事項ですから、すなわち会社ぐるみで内規、マニュアル、教育体制など多方面から自発的に取り組まなければならないテーマです。もはや本事案のように、会社ぐるみで特定の従業員にハラスメントを加えることは、逆にコンプライアンス欠如とされ株主はもとより従業員、一般社会からも糾弾される原因ともなりかねない問題です。

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