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【事 案】 防犯カメラを向けられ、ホームページ上に中傷記事を書かれたときどんな請求ができるか?

【結 論】 従前から近隣トラブルがあった場合でも、カメラの撤去と名誉毀損等の慰謝料請求ができる。(東地判H21.5.11)

 最近は防犯カメラがかなり普及し、犯罪の抑止と捜査に効果をあげています。しかし、本来は防犯のためのカメラが盗撮に使われたり、のぞき行為として疑われたりして近隣トラブルの原因になるケースが増えてきています。

 この事案は、私道をはさんで隣接する隣同士の、私道の歩行や自転車利用時など些細な騒音による感情のもつれが発端でした。その諍いから片方の家が防犯(監視)カメラを設置したことで感情の対立が拡大し、カメラ設置がプライバシー侵害にあたるかどうかが争われたものです。さらに加害者側がカメラで収集した内容をもとに、インターネットのホームページで相手を誹謗中傷的する記事を書き込んだため、これが名誉毀損及び侮辱にあたるとの争いに発展しました。

 裁判所は、プライバシー侵害について私道は被害者宅の敷地ではないものの、被害者宅の延長として日常生活に密着した空間であり、敷地内におけるのと同様にプライバシーの保護を受けることができる。加害者側は防犯目的で設置したと主張しているが、防犯目的の要素があったとしても、被害者のプライバシーを侵害するような態様での継続的な監視は、社会通念上被害者が受忍すべき不利益の程度を超えているとの理由で、カメラの撤去と慰謝料請求を認めました。(夫婦で20万円)
 またホームページによる名誉毀損については、毀損相手となる対象が特定されていること、社会的評価を低下させる内容であること、加害者は自ら毎日のできごとや心に浮かんだ思いを偽りなく伝えると書き込んでいるので事実を摘示したものであること、アクセス数が少ないことはホームページの持つ公開性からみて名誉毀損の成否を左右するものではないとして、慰謝料請求を認めました。(夫婦で50万円)
 さらに、被害者の容姿、性格、行動等を社会通念上許される限度を超えて侮辱的に記述した書き込みは、名誉感情を侵害する不法行為だとして、これについても慰謝料請求を認めました。(妻のみ20万円)

 本事案は民事で争われたものですが、名誉毀損罪と侮辱罪はれっきとした刑事犯罪になり得ます。本事案でも概ね刑事事件で問われる構成要件と同じ内容が審理されましたが、名誉毀損罪の立証は詐欺罪と同様に容易ではありません。
 刑事犯罪として処罰するには、公然と人または企業の事実的名誉・外部的名誉を毀損していること、真偽は問われないが人の社会的評価を低下させるに足る具体的な事実を摘示していること、名誉を毀損してやろうという故意があることの証明、そして親告罪ですから被害者からの告訴が必要です。

 また侮辱罪については諸説がありますが、加害者が公然と社会的評価を失わせるに足る行為をしたことの証明と、被害者からの告訴が必要です。またカメラの設置状況によっては、迷惑防止条例により処罰できる可能性もあります。
 本事案でも被害者は警察に通報したようですが、暴行や傷害など明らかに刑事事件に発展した場合を除いて、民事にはなかなか介入してくれません。

 内容にもよりますが、防犯カメラを設置するときには相応の覚悟が必要です。
 近隣問題に発展する可能性が多いので、紛争に発展する前に処理するのが賢明です。カメラの設置状況やトラブルに至った過程、被害者がカメラ撮影(場合によっては盗撮)を回避する方策がないかどうか、被害者が感じる不安などを整理しておくこと。さらに和解の可能性がないかなども検討する必要があるでしょう。

当事務所がお手伝いしますカメラの設置状況調査、ホームページ内容の調査、カメラ撤去の内容証明、捜査機関への告訴・告発、示談書作成