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【事 案】 学校でのハラスメントが認められたとき、どの程度の賠償請求ができるか?

【結 論】 相手側の親、市や県に対して治療費、精神的苦痛に対する慰謝料、逸失利益などが請求できる。(広高判H22.12.20)

 学校でいじめに遇った場合の損害としては、まずいじめられた本人の精神的苦痛に対する慰謝料があります。また暴行・傷害があったときには治療費、物的損害があったときにはその費用などが考えられます。さらに被害者両親の精神的苦痛に対する慰謝料、子どもの通院付き添いや看護で休業した逸失利益に対する賠償もあり得ます。

 本事案では、中学校生徒らのいじめが不法行為にあたるとされました。このため、加害者の両親には監督義務違反責任が、担任教師には保護義務違反の責任があるとして、加害者両親及び市・県に対しての損害賠償が認められたものです。その額は加害者両親と市・県が共同不法行為にあたるとして、各自が被害者生徒本人に対する慰謝料461万円、弁護士費用46万円の合計507万円を支払わなければならなくなりました。

 不法行為の内容は、被害者の文房具などを壊したこと、首を絞めたり足で蹴ったりする行為、万引きをそそのかされて実行し、あげく不登校になった被害者をからかう行為などが挙げられ、これらが毎日のように執拗に2年間にわたって行われました。その結果、被害者は統合失調症を患って不登校になってしまったというものです。

 裁判では統合失調症発症の原因が被害者の身体的素因や家庭環境にもあるとして、7割の過失相殺を認めた高裁の判断が妥当かどうかにつき、最高裁まで争われました。最高裁は、慰謝料は統合失調の発症による精神的苦痛と、いじめ自体による精神的苦痛に分けて考えるべきであり、いじめ自体による精神的苦痛に過失相殺を適用すべきではないとして高裁に差し戻しました(最判H22.1.21)。

 学校でのいじめは、友人間における遊びやふざけとの区別が難しいせいか、本事案においても市や県は裁判でいじめがあったとは認めませんでした。しかし、裁判で主張された酷いいじめに気づかなかったというのは、不自然かつ不条理だと考えます。またそれが現実に2年もの間続いたわけですから、被害者が統合失調症で不登校になった場合にはほかの生徒から事情聴取をする、学校内の見回りを強化する、生徒間の関係修復に努める、保護者と連絡をとって家庭での指導を求めるなどの措置をとる必要があったと思われます。

 本事案では、市や県に対して比較的高額な賠償金の支払いが命じられましたが、同時に加害者子どもの親の責任も問われました。近時は、たかがいじめと放置すれば大きな代償を払わされる傾向が強くなってきているようです。
 いじめで被害者が自殺してしまったケースでは、中学三年生の自殺事件で市・県に1,000万円(東高判H19.3.28)、高校三年生の自殺事件では、加害者親と県に350万円(横地判H18.3.28)の支払いが命じられたものがあります。

 いじめの事件の裁判記録を見るにつけ、被害者子どもの耐え難い精神的苦痛、さらに昂じて自ら命を絶つまで追い込むような行為は、被害者にも責任の一端はあったとか、いじめなどという言葉で安易に片付けられるべき問題ではないと考えます。被害者側であれ、加害者側であれ子どものいじめを放置・放任することは、子どもばかりではなく、親も社会一般も大きな損失を負うことになると認識すべきです。

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