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【事 案】 「Xは物を勝手に持ち去った、これは窃盗に該当し刑事告訴の対象になる」とネットに書き込んだら名誉毀損になるか?

【結 論】 事実を摘示して、他人の社会的評価を低下させる内容をサイトに掲載すれば名誉毀損にあたる。(最判H.24.3.23)

 名誉毀損は、身近で取り沙汰されることが多い行為です。告訴や被害届が必要な親告罪ですが、刑法上の罰則もあります。しかしどのような行為が名誉毀損にあたるかを判断するのは、実は仲々やっかいです。
 本事案は民事事件の損害賠償請求事件ですが、刑法と共通する点がありますので刑事問題として取り上げてみました。

 本事案では、新聞社社員が販売店からチラシを持ち去った行為を、フリージャーナリストが(1)「明日の朝刊に折り込む予定になっていたチラシ類を持ち去った」、(2) 「これは窃盗に該当し刑事告訴の対象になる」とネットに掲載したものです。
 そこで新聞社とその社員が、社会的評価を低下されたとして、ジャーナリストを名誉毀損で訴えたものです。

 高等裁判所は、(1)は事実の摘示、(2)を法的見解の表明と解釈しました。その上で記事を見た一般の閲覧者からすると、突然の取引中止を批判する趣旨だと受け止めるのが自然だとして、名誉毀損にはあたらないとしました。
 これに対して最高裁は、(1)と(2)があいまって事実を摘示し、新聞社と社員らの社会的評価を低下させたとして名誉毀損による不法行為を認めました。

 名誉毀損にあたるとするためには、「公然」と「事実を摘示」したことが必要です。そこで何が公然か、何が事実の摘示にあたるかが問題となります。
 公然だというためには、直接的な対象が不特定または多数人が認識しうる状態をいいます。そして不特定というのは、公表した者と特別の関係に限定されていない者を、多数というのはある程度の人数を要する相当な多数をいうとされています。
 本事案のように、インターネットのサイトで公表したときは、公然だといえるでしょう。

 次に事実を摘示することが必要で、人の社会的評価を低下させるに足る具体的な事実でなければならないとされていますが、虚偽の事実も含まれるとされています。
 事実の摘示でなく、見解の表明や意見ないし論評にすぎないときは名誉毀損になりません。見解、意見、論評まで名誉毀損にされてしまったら何も言えなくなり、表現の自由が害されるからです。

 本事案では、高裁は(2)を法的見解の表明と解釈したので名誉毀損にあたらないとし、最高裁は(1)と(2)が一体となって事実を摘示したので名誉毀損にあたるとしたものです。
 その判断は当該事案のように仲々難しいので、いたずらに名誉毀損を主張するのは危険です。逆に、正当な主張が名誉毀損になるのではと怖がるのも、問題といえましょう。

当事務所がお手伝いします名誉毀損にあたることの申し入れ、警察への告訴状・被害届の作成、慰謝料の申し入れ