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【事 案】 彼女と組んで、電車内で無実の男性を痴漢だと訴えたら犯罪になるか?

【結 論】 虚偽告訴罪が成立し、実刑で処罰されることがある。(最判H20.10.24)

 被告人が彼女と申し合わせて、地下鉄車内で乗り合わせていた無実の男性を痴漢だと訴えた事案です。
 訴えた目的が、ターゲットの男性客を痴漢に仕立て上げて窮地に陥れ、その男性から示談金の名目で多額の現金を獲得しようとしたものだったため虚偽告訴罪が成立しました。被告人は、他にも窃盗や詐欺などの犯罪を行っていたことから5年6か月の実刑判決を申し渡されました。

 本事案で、虚偽告訴罪とされた犯行の概要は、痴漢に狙われやすいよう彼女にスカートを履かせ、気が弱そうな中年男性を狙うよう指示し、男性客と身体が接触するほどの位置に立たせて、男性に対して「今触りましたね」などの嘘を言わせました。さらに被告人は、第三者を装って驚いている男性に、「触ってましたよね」など彼女に加勢する発言をして男性客を窮地に陥れ、駅長室に同行させました。駆けつけた警察官らに対しては、正義感の強い第三者の若者であるかのように演じて、男性を痴漢の加害者として逮捕させたものです。

 裁判所は、被告人は多額の示談金を獲得するため、男性に刑事処分を受けさせる目的で虚偽の申告をし、警察官まで欺き、司法手続を金銭欲のためによこしまな方法で利用したのであって、そのような動機と手段に酌量の余地は寸毫も認められない。
 また犯行に先立ち、彼女との携帯電話の通話記録を消去し、連れだって歩くことを避けるなど、彼女とは赤の他人を装って、犯行が警察に発覚しないよう画策したのは周到かつ狡猾な行動である。さらに、彼女は自首し、被告人も自首を勧められたが即座に拒絶し、あまつさえ彼女に家族を皆殺しにするなど言って自首の撤回を迫った、犯行後の態度が極めて自己中心的で反省心に著しく欠けると判示しました。

 本事案で被告人は、虚偽告訴罪のほかにも窃盗罪、強盗未遂罪、詐欺罪なども問われて併せて審理されたため、前述のように5年6か月という重い処罰がされましたが、虚偽告訴そのものも3か月以上10年以下という比較的重い犯罪です。
 虚偽告訴罪は、人に誤った刑事処罰や懲戒の処分を受けさせる犯罪ですから、国家の適正な審判作用保護と、訴えられた個人の利益保護を目的とします。しかし一方で、個人の告訴権を尊重する必要もあるため、申告した事実が真実だったときや、自分が虚偽だと認識していても客観的に真実だったとき、過失で虚偽を申告したときなどは成立しないとされています。

 行政書士は警察への被害届や告訴、告発も職務としていますので、虚偽告訴罪にあたらないかどうかにはよくよく気をつけています。例えば刑事上の被害を受けたという相談を受けた場合など、そもそも犯罪が成立するか否か、被疑者が特定されているかといったことの他、相談者が逆に虚偽告訴罪で訴えられないか、過剰な訴えにならないかなどについて細心の注意を払っています。

当事務所がお手伝いします事件記録の作成、警察への被害届・告訴状作成