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【事 案】 隣の家からラジオを大音響で流す嫌がらせを受け、ノイローゼになったら傷害罪で告訴できるか?

【結 論】 精神的ストレスが、大音響の嫌がらせによるものであれば傷害罪で告訴できる。(最判H17.3.29)

 暴行や傷害に関する相談を受けることは結構多いですが、どのような行為なら暴行罪になり、どの程度なら傷害罪に発展するかの判断は結構難しいといえます。
 基本的には、直接他人の身体に対して物理力の行使(身体的接触)をすれば暴行罪(2年以下の懲役)になり得ます。
 そして暴行の結果、相手がケガをすると傷害罪(15年以下の懲役)になる可能性があります。この場合、たとえ相手にケガをさせてやろうと思っていなかった(故意がなかった)としても、相手がケガをしてしまえば傷害罪になるのが原則です。

 では身体的接触がなくても暴行罪や傷害罪になるかというと、これが難しくて色々な見解がありますが、例えばひとの数歩前を狙って石を投げる、近くで大音響の太鼓や鐘を鳴らす、狭い部屋のなかで刃物を振り回すなどの行為は暴行罪にあたるとされています。つまり、少なくとも相手にケガを負わせかねない危険な行為であれば、暴行罪として認められる可能性があるということです。
 従って、身体的接触がなくても暴行罪と認められれば、たとえケガをさせてやろうと思っていなくとも、身体の生理機能障害を与えてしまうと傷害罪になると理解されています。

 本事案は、隣家住民が精神的ストレスによる障害を生じさせるかも知れないことを認識しながら、連日朝から深夜ないし翌未明まで、窓の一部を開けてラジオの音声及び目覚まし時計のアラームを、大音響で約1年半の間鳴らし続けた。その結果被害者は、慢性頭痛症、睡眠障害、耳鳴り症などの障害受けたものです。
 まさに、身体的接触がないのに傷害罪が認められた事案といえますが、暴行罪については触れていませんので一足飛びに傷害罪を認めたものです。他にも、例えば嫌がらせ電話、怒号などによって被害者の生理的機能に障害を与えれば傷害罪が成立する可能性があります。

 繰り返しになりますが、以上を整理すると、一般的には身体的接触があった時点で暴行罪成立、その結果ケガをさせてしまったときには、ケガをさせようと思っていなくとも傷害罪が成立する。ただし身体的接触がない本事案のようなケースでは、暴行罪を認めるのはなかなか難しいでしょう。しかし相手をノイローゼにしてやろうとか、病気を悪化させようと思って薬を与えないような場合には暴行罪にはならなくとも、より重い傷害罪になる可能性がありということです。

 いずれにせよ、軽い気持ちでの相手の胸ぐらをつかんだり、酒に酔った上であっても小突いたりすれば暴行事件として訴えられることがあり、そのはずみで相手にケガを負わせてしまったときは傷害罪まで発展してしまうおそれがあります。また、たとえ身体的接触が無くとも痛めつけてやろうなどと思ってやると、重い傷害罪となる可能性があります。近時当職が扱った事案では、子を抱えた親が不注意で高齢者に衝突して過失傷害罪を問われたケースもありますので、身の回りには加害者になり得る危険もたくさんあることにご注意頂ければと思います。

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